ビジネスにおけるキーポイント「ステークホルダー」とは?

作成日:2022.11.11 更新日:2024.04.19

ビジネスを展開するなかで、「ステークホルダー」の概念は極めて重要だといわれています。言葉からイメージすると取引先などのことだろうと、なんとなくのイメージがある人もいるかもしれません。 ただ、正確にはどのような意味があるのかなど、具体的なことはよくわからない人も少なくないでしょう。そこで、本記事ではステークホルダーの正しい意味や、ステークホルダーを意識した取り組みなどについて解説します。 

ステークホルダーの正しい意味とは

ステークホルダーは、「stake(掛け金)」「holder(保有する)」を合わせた造語です。1984年、アメリカのビジネス論理学者であるフリーマン氏が著書のなかで使用したのがはじまりだといわれています。

ステークホルダーとは利害関係者を指す言葉

ステークホルダーとは、企業の経営に直接的あるいは間接的に影響を受ける人や組織のことです。 簡単にいえば利害関係者を指し、直接的ステークホルダーと間接的ステークホルダーがあります。金銭的なつながりのある組織・人だけではありません。 たとえば、企業が置かれている地域社会や行政機関、さまざまな団体などが挙げられます。株主や従業員、クライアントもステークホルダーです。また、利害の一致しない関係者、競合他社もステークホルダーに含まれます。

直接的ステークホルダーと間接的ステークホルダー

直接的ステークホルダーとは、企業の規模・内容などに直接的な影響を与えたり、受けたりする相手を指します。 たとえば、企業で働いている従業員、商品・サービスの購入をする顧客、商品の材料の仕入れや商品・サービスの取引を行う取引先、融資関連の金融機関などです。 間接的ステークホルダーは企業に直接的な影響は与えないものの、間接的に影響を与える人・機関です。具体的には、企業の立地にかかわる地域経済・社会、政府、地方自治体などが挙げられるでしょう。 ただ、どの範囲までをステークホルダーと呼ぶのかについては、各企業によって異なります。

「ステークホルダー」という言葉の使い方

ステークホルダーという言葉の使い方は状況によって異なります。 例を挙げると、顧客を指して「商品やサービスについてステークホルダーを意識する」、取引先を意識した「ステークホルダーを重視した取り組みで利益の向上を目指そう」といった使い方です。 ほかにも、株主総会の前に株主を指してステークホルダーと言ったり、地域社会にかかわる際に地域社会を指して言ったりします。

混同しやすい「ストックホルダー」「シェアホルダー」との違い

ステークホルダーと混同されやすいものに「ストックホルダー」や「シェアホルダー」があります。それぞれの意味とステークホルダーとの違いについて見てみましょう。

シェアホルダーは大株主

簡単にいえば、ストックホルダーもシェアホルダーも「株主」のことです。 株の価値はその企業の価値が上がるほど高くなるため、シェアホルダーは企業の経営に敏感です。株主は保有する株に応じた配当を受け、合併・買収、取締役会メンバーの選出などに投票することができます。 とりわけ、大株主は株を多く所有していることから企業戦略などの影響力が大きく、重要な存在です。シェアホルダーのうち、普通株を持っている人を普通株主といい、企業方針に投票したり、取締役会のメンバーを選任したりすることができます。 優先株を所有している人を優先株主といいますが、こちらは投票や選任はできません。 ステークホルダーとの違いは、何を最優先にするかということで、シェアホルダーは利益、株価を優先しています。 一方、ステークホルダーは従業員であれば昇進、企業活動などの成功、顧客であればクオリティの高い商品を手に入れることや、充実したカスタマーサービスを受けられることなどが優先事項です。 また、シェアホルダーが株価のような短期的な目標を重視しているのに対し、ステークホルダーは経営面での向上といった長期的な目標の実現を目指しています。

ストックホルダーは一般的な株主

ストックホルダーも株主のことを指します。ストックホルダー企業と呼ばれる企業があり、こちらは株主の利益を最優先に考える経営を行っている企業です。 ステークホルダーもステークホルダー企業がありますが、こちらは会社にかかわるステークホルダー全体が利益を得られるように経営を行っています。

ステークホルダーが注目されている理由

ステークホルダーが注目されるようになったのは、社会全体が企業の社会的責任を重要視するようになったことが理由です。

企業の不祥事が増加したことがきっかけ

これまでの企業は自社の利益を優先していました。 企業の社会的責任(CSR)自体は、1956年の経済同友会が行ったCSR決議以来の歴史があります。2000年代になって企業の不祥事が増加し、それによってCSRは再び注目されるようになりました。 CSRを実行するためにはステークホルダーが望んでいるものを正確に知っておく必要があります。 たとえば、株主であれば利益の向上とともに株価のアップ、顧客であればリーズナブルで高品質な商品やサービスの提供などです。

さまざまな社会的活動を実施することが求められている

企業の社会的責任とは、たとえば、地球温暖化による気温上昇などを改善するための環境活動の実施、ボランティアや寄附など社会貢献が挙げられます。 地域との共存をするためにさまざまな工夫を行っている企業も増加傾向です。

コーポレートガバナンスの強化を行う

ステークホルダーが再注目されるようになったきっかけは企業の不祥事の増加だったため、不正や不祥事の防止をするためにコーポレートガバナンスを強化している企業も少なくありません。 金融庁の「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方(案)」によると、コーポレートガバナンスとは企業統治を指します。会社がステークホルダーの立場を考慮したうえで、透明で公正な意思決定をスピーディーに行うための仕組みです。 ステークホルダーの範囲は各企業によって異なるため、自社ホームページにステークホルダーの範囲について明確に掲載し、コーポレートガバナンスに役立てている企業もあります。

ステークホルダーの視点を取り入れた経営戦略のメリット

ステークホルダーの視点を取り入れて経営戦略を立てることで、企業はビジネスの存続および成長が期待できます。株主や投資家と良好な関係を築けば、ビジネスに必要な資金は調達しやすくなります。 また、顧客のニーズを満たすことはビジネスの安定化に、従業員の満足度を高めることは成果の最大化につながるでしょう。 信頼と評判を構築できることも、ステークホルダーの視点を取り入れるメリットの一つです。ステークホルダーの要求に応えれば企業は信頼を獲得でき、ブランド価値の向上につながります。 さらに、ステークホルダーの視点を取り入れた経営はリスク管理の面からも有効です。顧客や従業員と密接な関係を築くことで潜在的なリスクを早期に感知し、被害を最小限に抑えることができるでしょう。 最後に、持続可能性の達成が目指せるというメリットもあります。ステークホルダーの視点から社会的責任を遂行することで、企業は社会的な価値を得て長期的にビジネスに取り組むことができます。

ステークホルダーを意識した取り組み例

ステークホルダーが重要視されるようになって以来、企業に対する評価はステークホルダーへの貢献度が基準のひとつです。そこで、各企業はステークホルダーを意識した取り組みを行っています。

ステークホルダーマネジメント

自社のステークホルダーを正確に把握したうえで情報やデータを管理し、ステークホルダーのニーズを把握することが目的の活動です。ニーズがわかれば、それを目標としたアクションが起こせます。 そのためには地域のイベントなどに積極的に参加し、幅広いステークホルダーのニーズを知る努力が必要です。具体的には、自社のプロジェクトに対する反対意見があったとき、そのステークホルダーと情報共有をすることなどです。 コミュニケーションをとってお互いの信頼関係を築ければ、率直に話し合ってスムーズにプロジェクトを進められる可能性があります。

ステークホルダーエンゲージメント

ステークホルダーエンゲージメントは、ステークホルダーが企業に対してどの程度の信頼や価値を感じているかの指標です。 企業の信頼・価値を高める行動としてはステークホルダーの関心事を把握し、会社の意思決定や活動自体に取り入れます。 たとえば、地域社会であれば講演・懇談会などがあれば参加し、自社に工場がある場合は見学日を設けたり、地域の貢献活動に参加したりします。そのほか、株主に対してはさまざまな説明会・社内見学会の実施、ホームページ上での情報公開などが挙げられます。 ステークホルダーエンゲージメントはあくまでもステークホルダーとの信頼関係を構築することが重要ポイントになっています。

さまざまな企業のステークホルダーに対する取り組み

さまざまな企業でステークホルダーに対して行われている取り組みについて紹介します。 たとえば、多かったのがステークホルダーとの会話を積極的にすることです。従業員が自社内での不正を通報できる窓口を作ったり、タウンホールミーティングを行ったりしている企業もあります。 また、顧客に対するものでは、ホームページから簡単に問い合わせができる窓口を作ること、株主に対しては、調査結果の格付け対応をするといった取り組みです。

ステークホルダーマネジメント実践の流れ

ステークホルダーとの関係を良好に保つために、計画的な管理を行うことをステークホルダーマネジメントといいます。ここでは、ステークホルダーマネジメント実践の一連の流れをみていきましょう。 最初に、各ステークホルダーとの利害関係を洗い出します。 各ステークホルダーとの関わり方を相関図などを用いて把握し、利害関係者を細かく可視化していきます。 次の段階が、洗い出したステークホルダーの評価です。企業への影響力や関心度、ニーズ、ポジションなどの項目からステークホルダーの評価を行い、優先度などを決定します。 続いて、有効な働き方を見極めるために、ステークホルダーの属性を影響度や関心度といった指標から分析します。一覧表分析やマトリクス分析といった手法を用い、特に重要なステークホルダーを見極めることが重要です。 ステークホルダーへの行動計画が定まった段階で、各ステークホルダーの承諾や合意を取得していきます。 株主総会や個別の電話などで合意を得ていきますが、すべてのステークホルダーがすぐに理解を示してくれるとは限りません。反対意見などが出た場合は、速やかに行動計画の見直しを行いましょう。 ステークホルダーとの関わり方が定まったら、計画やルールを適切に運用し、その効果を管理していく必要があります。

ステークホルダーと適切な関係を築くポイント

ステークホルダーと適切な関係を築くためには、従業員自身もステークホルダーであることを意識することが重要です。従業員は企業のステークホルダーであり、その行動が相互に影響を及ぼします。 従業員の行動一つで企業の評判が大きく揺らぐことも考えられるので、自分自身がステークホルダーであるとの自覚を強く持って行動しなくてはなりません。 次に、特定のステークホルダーに注力しすぎないことも大切なポイントです。企業の活動は、消費者や従業員、株主、競合他社といったすべての利害関係者との間で成り立っています。 あるステークホルダーの影響力が大きいからといって、そちらだけを見て行動すると他のステークホルダーの不評を買い、企業の信用にも傷が付きます。 ステークホルダーと適切な関係を築くためには、偏りすぎない、バランスのよい経営が必要です。 ステークホルダーに対する企業の理念を深く理解することも重要なポイントです。企業理念などでステークホルダーに対する考え方が明文化されていないか、もう一度よく確かめてみましょう。

ステークホルダーと良好な関係構築は、これからの企業経営に不可欠な要素

これからの企業経営においてはステークホルダー資本主義が重要です。ビジネスにおいては「株主資本主義」という言葉があります。こちらは株主の利益を優先するという考え方です。 一方、ステークホルダー資本主義とは、ステークホルダー全体が利益を得られるように配慮するという考え方を指します。 ステークホルダーの一部にばかり配慮していては、ほかのステークホルダーの不満を高める原因になってしまうでしょう。そういったことにならないように、あくまでもステークホルダー全体に対して配慮した取り組みが必要不可欠です。 企業のCSRを実行するだけではなく、社会の課題を解決しなければなりません。同時に、自社の利益の獲得もすることができれば、幅広い社会問題の解決にもつながります。

日本古来の経営哲学

日本で古くからビジネスにおける基本の考え方として伝わってきたのが、顧客・企業・社会すべてにとって良い結果であるというものです。 これは「三方よし」という近江商人が行ってきた商売方法で、ステークホルダー資本主義に通じるものがあるとされています。実際、三方よしを企業理念とした企業は発展しているところが多いといわれています。 近江商人の考え方はCSRにもつながるものが少なくありません。 近江商人の思想には「義を先にすれば、後に利は栄える」という言葉がありますが、これは地域社会に対する貢献をまず考えることで、結果的に利益を得たり、企業が発展したりするという意味です。 「利は勤るにおいて真なり」は、利益は事業を一生懸命に努力し、社会貢献によって責任をはたすことで得られるものであると戒めています。 「陰徳を積み、さらに善事をする以外に無い」は、打算的な社会貢献をするのではなく、人に気づかれなくてもよいと奉仕するような気持ちで行うことが重要であるという考え方です。 自社の利益ばかりを考えて行動している企業は、いずれは衰退してしまいます。企業の発展のためには、社会課題の解決を含めて、多くのステークホルダーに満足してもらえるように考え、行動することが大切です。

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