事情があって仕事を休まなければならないとき、「休んだ日数分だけ給料から引かれる」というあいまいなイメージがある人も多いのではないでしょうか。
また、「休んだ分を残業や休日出勤などで埋めることができるのでは?」「あとで有給にしてもらえばよいのでは?」と考えて欠勤する人も少なくありません。
そこで、本記事では欠勤とはどういうものなのかを、休業や休職・有給との違い、欠勤控除なども含めて解説します。
欠勤に関する法律上の定義はない
欠勤は、「通常出勤しなければならない日に仕事を休むこと」を指します。入社時の労働契約上、出勤しなければならない日に休むのは労務提供義務の不履行となるため、その日分の給料はもらえません。
ただ、法律上では欠勤に関する定義は明記されていないのが現状です。
欠勤分は残業や休日出勤で補てんできない
欠勤した日数分を残業したり、休日出勤したりすれば補てんできると考える人はいませんか。しかし、労働基準法では従業員が残業や休日出勤した場合、法廷内労働時間として扱うことができない決まりです。
また、残業手当や休日手当を支払う必要があります。残業手当は、通常の賃金の25%以上増し、休日手当は通常賃金の35%以上増しです。
そのため、企業側としては通常賃金より多く給料を支払わなければならないため、欠勤分を残業や休日出勤で補てんすることを認めない可能性があります。
有給扱いにできるのか
状況次第では、欠勤を後日有給扱いにしてもらえる可能性はあります。一般的に、有給は事前申請しておかなければならないケースが多く、病気などが理由で欠勤した場合は有給として認められません。
ただし、会社と交渉して有給扱いを認められた場合は別です。例えば、インフルエンザなどで休まざるを得なかったときは、有給扱いとして認められるケースもあります。
いずれにせよ、勤務している会社の判断次第になるため、万が一に備えてあらかじめ社内規定を確認したり上司に確認したりするのもよいでしょう。
休業や休職との違いとは
欠勤は、出勤しなければならない日に休むことですが、休業や休職とはどのような点が違うのでしょうか。
休業は会社都合による休みが含まれる
休業も「会社を休む」という点は、欠勤と共通しています。ただ、休業の場合は個人都合だけではなく、会社都合で休まされる場合も含まれているのが異なる点です。
会社都合での休みの例としては、業績悪化が理由で「しばらく休んでほしい」と言われた場合などが挙げられます。労働基準法では、会社都合による休業の場合、平均賃金の60%以上が休日手当として支給される決まりです。
そのため、全額とはいかなくても最低限の生活を送ることは保障されています。個人都合での休業は、給料の支払いはありません。
休職は個人都合で働けない場合の猶予期間
休職は、個人都合で働くのが難しいときに一定期間を猶予として与えられる休暇です。
病気やケガなどで長期療養が必要なときには、休職できます。休職については、労働基準法での定義もなく、各企業に委ねられている状態です。
そのため、企業によっては海外留学や、家庭の事情によって長期間休む場合も休職として認められるケースがあります。また、休職の際の給料支払いはありません。
有給休暇や公休との違い
上述した通り、有給休暇は基本的に事前申請が必要です。会社を休んでも給料は支給されるため、安心して楽しめる日として活用できます。
法律上は、入社から6カ月以上かつ全労働日の8割以上出勤することで10日間の有給を得ることが可能です(一般労働者の場合)。一方、公休(法定休日)は会社によって定められている休みを指します。
毎週必ず休みの日や年末年始、お盆などの休みも公休となり、例えば毎週土日が休みであれば、土日は公休です。年中無休の企業であれば、公休は従業員によって異なります。
公休に何らかの理由で出勤した場合は代休をとったり、休日手当が支給されたりするのが決まりです。
欠勤が多いと評価が下がる原因になる場合も
前述したように、労働契約をした際に出勤すると決められた日は必ず仕事をするのが決まりです。そのため、欠勤は労働契約違反となります。
また、無断欠勤をした場合は仕事に影響するケースも多く、ほかの従業員がカバーしなければなりません。欠勤せざるを得ない場合はできるだけ電話で理由をはっきりと伝えたうえで、迷惑をかけてしまうことを謝るなどするのが無難でしょう。
ただ、欠勤の連絡方法は企業によって決められているケースもあるため、ルールに沿って連絡をするのが賢明です。
欠勤が多いと評価が下がる可能性も
労働契約をしている以上、出勤が決められている日は必ず仕事を行うのがルールです。病気や事故などで急に休まなければならない場合は「仕方ない」「お互い様だ」と考えてもらえる可能性もあります。
しかし、あまりにも欠勤数が多い場合は企業側の信頼を失い、評価が下がるなどの影響も否めません。無断欠勤は言語道断で、行動評価や勤務態度で減点されることは免れられないでしょう。
収入が減ってしまう
欠勤している間の分は、基本的に給料が支給されないため、欠勤した日数分だけ収入は減ってしまいます。
収入が減った分は、貯金などを崩して生活費などに充当する必要があるため、自由に使えるお金も減ったり、貯金がない場合は生活が困窮したりしてしまう可能性があるでしょう。
収入が減った分を節約しようとして「ストレスがたまる」「体調に変化が起きる」といった人もいるため、注意が必要です。病気などで欠勤した場合でも、給料は支給されないため、ますます日常生活に影響が出てしまいます。
ただし、病気やケガの場合は条件を満たすことで傷病手当金を受けられる可能性があるため、勤務先に確認してみましょう。
欠勤が解雇の原因になる可能性は少ない
欠勤をしたからといって、それがすぐに解雇の原因になることはありません。ただし、解雇の理由にならないのは、あくまでも病気やケガなどやむを得ないような理由があった場合です。
急な事情で休まざるを得なくなることは誰にでもあり得るため、1度や2度程度で解雇まで考える企業はほとんどないでしょう。ただし、例外として無断欠勤を2週間以上した場合は解雇される可能性があります。
欠勤数が多すぎる場合は処分対象になる場合も
明確な理由があり、長くても数日程度であれば「お互い様だ」と考えてもらえるケースもあるでしょう。
例えば、風邪をひいて高熱や咳ばかりしている状態の場合は、出勤しても仕事が手につかないでしょうし、ほかの従業員に風邪をうつす可能性もあります。
結局、途中退社しなければならなくなることも多い傾向です。これでは、出勤する意味がないため、欠勤して早く完治するように努めたほうがよいでしょう。
しかし、どのような理由があっても欠勤数が多い場合は、会社とほかの従業員に迷惑がかかるため、始末書の提出や減給対象になるケースもゼロとはいえません。悪質と判断された場合は、それ以上の重い処分をされる可能性もあります。
2週間以上の無断欠勤で解雇の可能性
わざとではなく、欠勤をすると連絡がしにくくて結果的に無断欠勤になってしまう例も少なくありません。社会人の一般常識として欠勤の連絡は、どのような状態であってもしたほうが賢明です。
もし、無断欠勤になり、ずるずると連絡をしないまま長期間たってしまうと会社側としてもなんらかの処分を考えざるを得なくなります。軽い場合でも、始末書の提出や注意程度はされる可能性があり、職場には勤務しにくくなるでしょう。
また、最悪の場合は2週間以上の無断欠勤で解雇になるため、注意が必要です。
懲戒解雇と諭旨解雇の違い
懲戒解雇は、簡単にいえば「クビになる」という状態です。企業が即時に従業員を解雇します。
諭旨解雇は、懲戒解雇より1つ軽い処分で企業から従業員に「やめてくれないか」と退職の勧告をするものです。こちらは、自己退職扱いになるため、条件を満たしていれば退職金が支払われます。
懲戒解雇の場合、勤務先の就業規則によっては退職金が支払われない可能性もあるでしょう。
欠勤控除とはどういうもの?
欠勤控除とは、従業員が労働日に休んだ場合にその時間分・日数分を給料から差し引くことを指します。給与明細書には、欠勤控除あるいは勤怠控除と記載されているケースが多い傾向です。
ノーワーク・ノーペイの原則
日本には、「ノーワーク・ノーペイの原則」という考え方があります。簡単にいえば「仕事をしない者に給料の支給はしない」ということです。
有給やリフレッシュ休暇、慶弔休暇に関しては欠勤扱いにしない企業もあります。そもそも、欠勤自体が労務提供義務の不履行であり、労働契約に違反する行為です。
ただ、病気やケガ、家庭の事情などで急に休みを取らざるを得ないことは誰にでもあり得ます。そのため、「ノーワーク・ノーペイの原則」があるというわけです。
休むほど給料は減っていくため、従業員側も多く欠勤するメリットはありません。
裁判員制度で裁判員に選出されて欠勤した場合はどうなる?
日本は、裁判員制度があり、国民のなかから裁判員として選ばれて指定された日に仕事を休まなくてはならないケースもあります。この場合も、会社としては欠勤扱いにすることが多い傾向です。
つまり、給料の支給はありません。ただ、裁判員は国から日当が支払われるため、勤務先からの給料が支払われなかったとしても、その分を裁判員の日当で補えるようになっています。
欠勤控除の計算方法
欠勤控除は、給料から欠勤した日数分・時間分を差し引かれます。
欠勤控除は「月給÷所定労働日×欠勤日数」で計算可能です。例えば、所定労働日数が20日、月給が25万円、欠勤日数が2日間だったとします。この場合の計算式は「25万円÷20日×2日間=2万5,000円」です。
1日分の欠勤控除が1万2,500円、2日間欠勤しているため、2万5,000円が欠勤控除として給料から差し引かれます。おおまかに計算すると、その月の給料は22万5,000円です。
欠勤控除については就業規則に記載がある
一般的に、欠勤控除については就業規則にあらかじめ記載されている企業が多い傾向です。
また、入社時の書類にも記載されているケースが多く、その際に説明も受けている人もいるでしょう。もし、そういった説明がなく就業規則にも記載がない場合は、事前に会社へ確認しておく必要があります。
なぜなら、欠勤控除は収入に関わるもので、病気などで欠勤する際に欠勤扱いにしてもらうか、有給にしてもらうかの判断にもつながるからです。
傷病手当金の対象になるケースも
インフルエンザなどで1週間前後休まなければならない場合でも、欠勤扱いになります。有給があれば、企業側と交渉して有給扱いになる可能性もあるでしょう。
もし、それができなかった場合で、4日以上欠勤したときは傷病手当金の対象になります。条件を満たした場合、傷病手当金は健康保険で給料の3分の2が支給されるため、生活が困窮してしまうことを避けることができるでしょう。