謝罪するときによく使われる「すみません」や「すいません」という言葉。どちらが正しい言い方なのか、疑問に思いながら使っている人も多いのではないでしょうか。
両者には使い方に明確な違いがあります。また、ビジネスシーンで謝罪するときには、注意が必要な言葉です。この記事では、「すみません」と「すいません」の違いや、ビジネスシーンで使える謝罪の言葉について紹介していきます。
「すみません」と「すいません」の語源、意味について
体がぶつかったときや、軽く謝罪するときに使う「すみません」「すいません」には、どのような意味があるのでしょうか。
まず、「すみません」と「すいません」の意味は全く同じです。その語源は、「済む」という言葉を打ち消したものです。
「済む」には「物事が完了する」「解決する」「満足する」といった意味のほか、「他人に対して言い訳が立つ」という意味もあります。
打ち消しの語を伴って使うケースでは、「他人に対して言い訳が立たない」「気持ちがおさまらない」という意味になり、謝罪の気持ちを表すフレーズになります。
謝罪とは「言葉だけでは気持ちが済まない」ほど反省した状態のときに行うものであり、「済まない」から「済みません」へ、さらに「すいません」へと変化した、と考えると分かりやすいでしょう。
「すみません」と「すいません」はどちらが正しい言葉?
「すいません」という言葉は「すみません」が、発音しやすく変化したものです。
「み」と「ま」の連続は発音しにくいこともあり、関東地方の若年層の間で「み(mi)」の子音(m)が抜け落ちる形で変化しました。
「すみません」の変化には「すんません」「すんまへん」などもありますが、いずれも話し言葉でのみ使われる「口語」です。そのため、文章に書くときには「すいません」ではなく、書き言葉である「文語」としても使える「すみません」を使います。メールやSNSで使う際には注意しましょう。
「すいません」という言い方は、老若男女を問わず広まって定着していますが、正確には「すみません」です。
goo国語辞典では「すいません」は「すみませんの俗な言い方」と紹介されており、特に、東北、四国、九州、沖縄地方では「すみません」を使うことに抵抗感がある人も多いようです。
こうした状況を考えると、話し言葉として使用する際であっても「すいません」ではなく、「すみません」と言うように心がけておいた方が無難でしょう。
真剣に謝罪していても「すいません」という言葉を使ったばかりに印象が悪くなってしまったり、軽い謝罪だと受け取られてしまったりする可能性も、なきにしもあらずです。
「すみません」と「すいません」は謝罪、感謝、依頼に使われる
「すいません」や「すみません」は、謝罪のシーンだけでなく、依頼や感謝にも使われます。飲食店で料理の注文をするときには、手を挙げて「すいません」と呼びかけますし、エレベーターの扉を開いて待っていてくれる人に対し「すみません」と感謝した経験がある人も多いでしょう。
このときの「すいません」や「すみません」に、謝罪の意味はありません。しかし、「店員さんに時間を取らせて申し訳ない」「ドアを開ける手間を取らせて申し訳ない」という気持ちは含まれています。
「すみません」の元々の語源である「気持ちが済まない」という意味合いを考えると、感謝や呼びかけの際にも「すみません」を使うのは自然なことだと言えるでしょう。
英語では、謝罪は「I’m sorry」、感謝は「Thank you」、依頼は「Excuse me」とはっきり分かれており、混在することはありません。
しかし、日本ではそのすべてを「すいません」や「すみません」で済ませることがよくあります。「すみません」の意味は明確でなく、多くの意味を持つ言葉として認識されています。
「すみません」と言われた状況によって「謝罪」「感謝」「依頼」のどれに当たるのかを受け手が判断している状態なのです。
「すみません」を謝罪として使う場合、「ごめんね」というような軽い謝罪であればそのまま使ってもかまいませんが、真剣な謝罪の場合は、注意が必要です。
その場の雰囲気などから、感謝や依頼だと間違われることはなくても、謝罪の程度が軽いものだと思われないように、言葉を添える必要があります。このように考えると「すみません」よりもくだけた印象を与える「すいません」は謝罪で使うべきではないでしょう。
一方で、フランクに話しかけたい場合には「すいません」をうまく利用すると効果的です。
「済む」という言葉を「気持ちが済む」という意味で使い始めたのは室町時代からと考えられ、今のように謝罪の気持ちで使うようになったのは江戸時代、さらに、感謝や依頼を表す意味で使われ始めたのは、明治時代だと言われています。
「すいません」や「すみません」が意味する範囲はどんどん広がっており、さまざまなシーンで使える便利な言葉として浸透し続けています。
ビジネスシーンで「すみません」は使えない?適切な言葉とは
ビジネスシーンでも「すみません」は頻繁に使われますが、より丁寧に話すなら、依頼をする際には「恐れ入りますが」、感謝する際には「有り難うございます」というフレーズを使うべきです。
そして、謝罪する際に「すみません」を使うのはご法度です。「ごめんね」程度の、ちょっとした謝罪の意味を持つ「すみません」を使うと、真剣に謝らなければならない場面で謝罪の程度を軽く見られてしまうリスクがあります。
そこで、「すみません」に代わる言葉として使用したいのが「申し訳ありません」です。「申し訳ありません」は、謝罪する相手を選ばず、オールマイティに使える謝罪のフレーズなので、覚えておきましょう。
ビジネスで謝罪する場合は、トラブルが発生した時点で電話かメールでお詫びを伝え、その後、直接対面して謝罪するケースがほとんどです。
「メールでの謝罪」「電話での謝罪」「対面での謝罪」の3つのシーンについて、適切な謝罪の言葉を紹介していきます。
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- メールでの謝罪
- ビジネスでは直接会って謝罪することが基本です。そのため、メールは直接謝罪の補助的な役割として使われます。
取引先が遠方ですぐに出向くことができない場合や、直接謝罪をした後のフォローとして行うようにしましょう。メールで謝罪する場合にも、「申し訳ありません」が基本的なフレーズです。
そのほかに「お詫び申し上げます」といったフレーズもよく使われます。「心より」「深く」「誠に」といった言葉を付けて、より深い反省を伝えることも可能です。
「お詫び申し上げます」の前には「謹んで」という言葉を付けることもよくあります。また、「申し訳ありません」をさらに丁寧にした、「申し訳ございません」を使ってもよいでしょう。
「申し訳ありません」というフレーズは、個人的な謝罪から取引先への謝罪まで、謝罪する相手を問いません。相手によって変えなければならないのは「申し訳ありません」という言葉の前後にあります。
社内の相手に対する比較的軽めの謝罪の場合は、お詫びの気持ちを伝えることがメインですが、取引先など会社間の問題で謝罪が必要な場合は、トラブルが発生した理由や、今後の対応が重要になってきます。
十分な謝罪の言葉とセットで、この2点に言及する必要があることを覚えておきましょう。また、件名は「〇〇についてのお詫び」など、謝罪であることが一目で分かるようにしておきましょう。
メールで謝罪文を送ったことについては「メールにて恐縮ですが」、直接対面したり電話したりする前に送る場合は「取り急ぎお詫び申し上げます」と付け加えておくとよいでしょう。
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- 電話での謝罪
- 電話での謝罪は、とにかく早く相手に謝罪の気持ちを伝えたいときに有効です。トラブルが発生したら、まず電話で先方に謝罪を行いましょう。
アポイントを取って対面での謝罪を行う際にも、まず電話できちんと謝罪しておくことが重要です。電話できちんと謝罪をしておけば、対面で謝罪するときにスムーズなやり取りをすることができます。
電話で謝罪する際にも「申し訳ございません」「お詫び申し上げます」を使いますが、そればかり使っていると一辺倒なやり取りになってしまいます。より、謝罪の気持ちを伝えたいなら、「お詫びの言葉もございません」「弁解の余地もございません」といったフレーズも織り交ぜるとよいでしょう。
相手の反応を受けて「〇〇さんのおっしゃる通りです。弁解の余地もございません」「この度は多大なご迷惑をおかけして、お詫びの言葉もございません」などと使うことができます。
「お詫びの言葉もございません」というフレーズは、「あまりに事態が深刻で、それに見合うお詫びの言葉を見つけることができない」という意味合いなので、軽々しく使うと大げさで状況にそぐわない言葉になってしまいます。多用する言葉ではないことも知っておきましょう。
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- 対面での謝罪
- 対面での謝罪は気が重いものですが、面と向かって相手に誠意を伝えられるチャンスでもあります。
まず、何をおいても一番にお詫びの言葉を述べるようにしましょう。このときにも「すみません」という言葉を使ってはいけません。「申し訳ありませんでした」「お詫び申し上げます」と頭を下げて謝罪し、自らの反省点を心を込めて伝えましょう。
たとえ、相手にも多少の非があるケースでも、最初からそれを指摘してはいけません。「申し訳ありませんでした。〇〇さんからいただいた発注内容が分かりづらくて」などと続けてしまうと、「トラブルの原因は相手にあり、自分は悪くない」という印象を強く与えてしまいます。
対面して謝罪する場合は、特に、言い訳に聞こえるようなフレーズは慎みましょう。謝罪の後には、今後同じ過ちを犯さないように対応策を検討するはずです。
この際に、今回のトラブルの発生理由として先方が注意する点があれば話題に上がるでしょう。
相手に対して言いたいことがある場合も、最初から指摘するのではなく、こうした場面で前向きな話し合いのテーマとして取り上げるようにしましょう。
「すみません」を上手に使い分けて、スマートな言葉遣いをしよう
「すみません」や「すいません」はさまざまなシーンで使える便利な言葉ですが、ビジネスで使う際には注意が必要です。
特に、仕事相手や上司など、目上の人に謝罪する際には、「申し訳ありません」などの丁寧な言葉が適しています。
一方で、「すいません」や「すみません」は、くだけた雰囲気で話したいときや距離を縮めたいときに便利な言葉です。上手に使い分けて、「スマートな言葉遣いができる社会人」を目指しましょう。