転職活動を始める際には、さまざまな候補先があります。たとえば、「団体職員」という働き方を目指す人もいるでしょう。
団体職員は会社員と比べて、仕事内容や条件が異なり、貴重な経験を積める職業です。この記事では、団体職員の詳細や労働条件、人材募集している組織ごとに就職する場合のメリットなどを解説していきます。
何らかの職に就いて働いている人を「職員」と呼びます。そして、「団体職員」とはその中でもさらに細かく定義される仕事です。この段落では、団体職員の定義について説明します。
公共に奉仕する仕事の総称
非営利組織で働いている職員の総称が「団体職員」です。通常、企業や営利団体の職員は利益を生み出すことを目的として雇われています。
どのような部門、職種であれ、所属している組織に利益をもたらさなければなりません。
そのため、人事評価も利益に対する貢献度で行われるケースが大半です。それに対して、団体職員は最初から利益を追求していない組織で働いているので、売上や獲得した契約数などで評価されることはほぼありません。
団体職員は公共に奉仕する仕事であり、組織が円滑にまわるよう影で支えます。
公務員との違い
団体職員と似た立場の職業に「公務員」が挙げられます。いずれも一般企業に属さず、公的な仕事をこなすのは同じです。
ただし、公務員と団体職員は別の仕事として定義される傾向にあります。そのため、役所や教育機関で働いている人は公務員、それ以外の非営利団体で働いている人は団体職員として区別されます。
公務員に比べて切り分けが難しいのが「準公務員」です。
準公務員とは公務員の資格を持っていないものの、役所や教育機関で公共の仕事をしている人です。準公務員と団体職員を一緒にしている職場も多く、両者に明確な違いはないといえます。
強いていえば、団体職員という大きなカテゴリーの中に準公務員も含まれているイメージです。
団体職員として働くメリット
もっとも魅力的なポイントは「安定性」です。団体職員の職場は営利を追求していません。
なぜなら、売上によって運営されている組織ではないからです。そのため、集客や景気に左右されず仕事を続けられます。不景気によって給料や賞与が下がることは少ないでしょう。
次に、「数字のプレッシャーから解放される」点です。団体職員には会社員のようなノルマがありません。
売上や新規開拓の目標を担うこともなく、日々の業務に集中できます。売上に関係なく好きな分野を専門的に極めることもでき、やりがいを感じやすい仕事だといえるでしょう。
そのほか、公共性の高い職場なので「人の役に立っていると実感できる」のもメリットです。
団体職員は来訪者から感謝をされる立場であり、仕事に喜びを抱きやすいでしょう。地域住民との交流が盛んな職場もあります。仕事を通じて世の中に尽くしたい人には向いています。
団体職員はどのような組織で働いているのか
あくまでも一部ではあるものの、ここでは、団体職員が働いている職場をまとめています。
いずれも営利組織ではなく、公共性の高い点が共通しています。
NPO法人
英語の「Non Profit Organization」の略であり、「非営利組織」を意味する言葉です。
都道府県や指定都市から認可を受けることでNPOを名乗れるようになります。その結果、公共性の高い事業を続けるための支援を得やすくなるのです。
収益が少なくても組織の存続が可能です。NPO法人には事務職をはじめとする人員が必要であり、団体職員として働ける枠があります。
財団法人
2名以上の社員が集まることで登記できる団体です。業界団体や職能団体のほか、介護施設なども社団法人として設立されることが少なくありません。
ちなみに、設立にあたって行政や専門組織からの認可を得る必要はありません。登記さえ終えれば社団法人として認められます。そのため、社団法人を名乗っている組織は数多く、転職活動では無視できない候補先となるでしょう。
政党
営利目的ではないという面では、政党も団体職員を募集している職場のひとつです。
政党といっても、職員まで政治に参加するわけではありません。党員のスケジュール管理や経費の管理、会議や勉強会の会場手配など、事務的な作業はたくさんあります。
政治団体とはいえ、団体職員として働くにはビジネスパーソンとしての能力が必須です。ただし、大前提として「政治理念に共感している」ことが雇用条件になります。
政治的に納得できない党での仕事は精神的に苦痛となる可能性があるので、応募する際は慎重に考えましょう。
農協
日本の農業を支えるために、農業協同組合法に基づいて設立された組織です。地域ごとに拠点があり、農業指導や機器、農薬の共同購入などを担っています。
また、JAバンクという銀行の運営も大切な仕事のひとつです。地元の農家との交流がさかんにあるので、コミュニケーション能力に自信がある人にはぴったりの職場です。地域を盛り上げている実感を持ちやすいのも農協で働く魅力です。
団体職員はどれくらい稼げるのか?仕事内容や年収について
転職活動をするにあたり、志望先の労働条件は重要なポイントです。ここでは、団体職員の仕事内容や年収を解説します。
一般企業と大きく変わらない?
非営利組織で働くからといって、必ずしも一般企業からかけ離れた仕事をするわけではありません。データ入力や書類の作成など、企業の事務職とそれほど変わらないことも大半です。
逆をいえば、一般企業での経験を生かせるチャンスに恵まれています。企業からの転職を目指す場合でも、物怖じせずに団体職員としてのセカンドキャリアを検討してみましょう。むしろ、一般企業で培った経験を必要としてくれる職場もあります。
職場の中心としての働きを求められることも
団体職員とは、数字目標を達成して評価されるような仕事ではありません。その代わり、自主性を重んじられる職場が多いといえます。
新入社員であっても本人に希望があれば、やりがいのあるポジションを任せてもらえることもあります。たとえば、ボランティア事業を担っている団体で、企画運営をできる可能性もあるでしょう。
セミナーや勉強会の責任者にもなれますし、経営陣のサポートをできる可能性も少なくありません。本人の努力とスキル次第で、やりがいのある仕事を担えます。
若手を求める職場が多い
仕事内容にもよるものの、団体職員の募集では若年層が優遇される傾向にあります。
なぜなら、長期的にキャリアを形成してほしいと経営陣が願っているからです。そもそも団体職員は転勤がほとんどないため、同じ職場で継続的に働いてくれる人材が重宝されるのです。
20代の若者や第二新卒の転職者が目指す新天地としてもおすすめだといえるでしょう。
団体職員の待遇
厚生労働省が発表した
「非営利セクター・社会的企業の雇用等について」によると、NPO法人の職員のうち、32.9%の年収が「200~300万円未満」でした。
なお、「300万円以上」は25.1%です。ただし、この数字はあくまでもNPO法人全体の統計であり、小規模組織も含まれています。中小規模のNPO法人だけに限れば、平均年収がもっと高くなる可能性は高いでしょう。
それに、団体職員には「安定性」という魅力もあります。一般企業と違い、団体職員は数字目標の達成率で評価されるようなことがあまりありません。
結果よりも過程を評価してもらいやすく、数字に関するプレッシャーが少ない仕事です。数字に追われるよりも、好きな仕事と時間をかけて向き合いたい人にはぴったりの労働環境です。
団体職員のおすすめの就職先とその魅力を紹介
多くの組織が団体職員を募集しています。ここからは、団体職員として働くメリットを組織ごとにまとめていきます。
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- NPO法人で働くメリット
- 慈善事業や地域貢献を担っているNPO法人は、団体職員の有力な就職先のひとつです。NPO法人で働く最大のメリットは「やりがい」でしょう。
NPO法人の多くは「貧困問題解決」「伝統的な文化の継承」といった崇高な理想を掲げています。こうした理想に共感しているのであれば、NPO法人で働くことそのものに強い誇りを抱けるはずです。
また、NPO法人は個人の「成長」をうながしてくれる場でもあります。非営利組織でないからといって、職員には目標がないわけではありません。
むしろ、多くの地元民、行政を巻き込むには社会人としての高い能力が必要とされます。プレゼンテーション能力や営業力に加え、人間的魅力も問われます。そのような場所で厳しくもまれたいのなら、NPO法人は絶好の職場です。
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- 財団法人で働くメリット
- 「仕事内容が変動しない」のは大きなメリットです。財団法人は各省庁の取り組みに準じた事業を展開するケースが少なくありません。
すなわち、業務内容がはっきりと定められています。団体職員は同じ業務をルーティーンで行えるので、「やりやすい」と感じられる人も多いでしょう。仕事に驚きや意外性を求めず、決められたルールを遂行することに喜びがある人にはおすすめです。
さらに、財団法人は「公共性が高い」仕事です。福祉や教育について、先進的な業務を担っている団体もあります。
世の中に貢献できる現場であり、モチベーションを長く保ちやすいでしょう。自主性が尊重される職場もあり、キャリアに影響されず意見が通りやすいのも魅力です。
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- 社団法人で働くメリット
- 非営利組織の中でも、一般企業と同等の待遇を期待しやすいのが社団法人です。なぜなら大企業や省庁、地方自治体などが成り立ちに関係している傾向にあるからです。
そのため、資金力という面で社団法人は比較的安定しています。転職する職場にもよるものの、「労働条件が恵まれている」のは社団法人のメリットでしょう。基本給はもちろん、賞与においても一般企業と変わらない額が支給されることもあります。
次に、「競合他社が少ない」ので経営が傾きにくいのもポイントです。そもそも社団法人が設立される理由は、利益が少なくても社会的に必要であるからです。
こうした組織を守るために社団法人という立場が用意されました。利益が少ないということは、参入してくる一般企業が少ない分野であること意味します。
競合他社の動きに気をとられず、自社の仕事に集中できる環境が整っているのは特徴です。
団体職員はやりがいのある仕事!転職活動の候補にしよう
一般企業だけがセカンドキャリアを築く場所ではありません。団体職員としてもやりがいのある仕事を担えるはずです。
地域住民との交流や公共性の高い事業を通して、人間的にも大きく成長できるでしょう。また、若手を求めている現場が多いのも特徴です。
転職活動をするなら、団体職員としてのキャリアも検討してみるのがおすすめです。