「内示を受けた部署異動を拒否したい」「部署異動の希望を出したい」などと考えていませんか。キャリア形成にかかわるため、所属する部署はとても重要です。理想の部署で働きたいと考える人は多いでしょう。
この記事では、部署異動を拒否できるか、部署異動の希望を出せるかなど、働くうえで知っておきたい基本的なポイントを解説しています。部署異動が気になる人は確認しておきましょう。
部署異動が起こる背景
部署異動を命じられる理由はさまざまです。主な理由として以下のものが挙げられます。
欠員が発生した
よくある理由のひとつが、特定の部署に欠員が発生することです。何かしらの理由で前任者が退職した、育児休業を取得するため前任者が休職したなどのケースが該当します。
もちろん、新規採用で対処することもできますが、採用活動を行う時間がない場合や採用コストを抑えたい場合、即戦力を求める場合などでは、部署異動で対処することがあります。新規採用よりも部署異動のほうが手間とコストがかからないうえ、確実に戦力になる人材を確保できるからです。
従業員の成長を促すため
従業員に経験を積ませて成長を促すため部署異動を行うこともあります。例えば、営業部からマーケティング部へ異動すれば、広い視点から商品販売について検討できるようになります。若手社員の部署異動は、成長促進を目的としていることが多いでしょう。
異動を命じられると評価が低いのではと考える人もいますが、さらなる成長を促すために命じているケースが少なくありません。前向きに捉えてチャンスを活かすことが重要です。
適材適所へ配置するため
従業員の能力を活かすため、部署異動を行うことも少なくありません。例えば、外国語が堪能な従業員を海外事業部へ異動するなどが考えられます。
あるいは、資格取得をきっかけに部署異動を行うケースもあるでしょう。適材適所へ配置することで従業員の能力を活かせるため、企業の生産性を高められます。
組織の成長を促すため
部署の人員を入れ替える目的で部署異動を行うこともあります。人員を入れ替える目的は、組織のマンネリ化を防ぐためです。同じ人員で仕事を続けていると、いつの間にか仕事の進め方が固定されてしまいます。
新しい発想が生まれにくくなるため人員を入れ替えるのです。例えば、他部署から人員を異動して新しい視点を加える、他部署のノウハウを導入するなどが考えられます。新たな刺激を加えることで、組織ならびに従業員の成長を期待できます。
事業などの都合
事業規模を拡大させるため、新規事業を立ち上げるためなどの目的で、部署異動を行うケースもあります。このようなケースでは、実績のある優秀な人材や適性のある人材を異動させることが多いでしょう。
部署異動は拒否・希望できる?
部署異動に対する捉え方はさまざまです。拒否して現在の部署で働きたいと考える人もいれば、希望して他の部署へ異動したいと考える人もいるでしょう。部署異動は、拒否したり希望したりということができるのでしょうか。
部署異動は拒否できる?
部署異動は、基本的に拒否できないと考えられています。日本企業の人事権は非常に強力だからです。この背景にあるのが、雇用期限のない無期限雇用を前提としていることです。
日本の企業は従業員を簡単に解雇できない代わりに強力な人事権を有しています。
特に、雇用契約書や就業規則に「業務の都合により社員に異動を命じることがある」などと記載されている場合は注意が必要です。
業務命令による人事異動となるため、拒否すると業務命令違反で懲戒処分の対象になる恐れがあります。懲戒処分の対象に必ずなるわけではありませんが、その可能性があることは押さえておかなければなりません。
ちなみに、内示の段階であれば拒否できると考える人もいるようです。しかし、内示の段階でも基本的には拒否はできません。内示、発令に関わらず、人事異動そのものが業務命令だからです。公に発表される前であっても、人事異動は基本的に拒否できないと考えておきましょう。
ただし、すべてのケースで拒否できないわけではありません。次のケースに該当する場合、人事異動を拒否できる可能性があります。
人事異動を拒否できる可能性のあるケース
最初に挙げられるのが、
雇用契約で職種や勤務地が限定されているケースです。定められた範囲外の職種や勤務地に異動を命じると雇用契約違反にあたります。
したがって、雇用契約書などに異動を命じることがあると記載されていたとしても、従業員は人事異動を拒否できる可能性があります。部署異動を拒否したい場合は、雇用契約書を確認するとよいでしょう。
次に挙げられるのが、
従業員が抱える何かしらの都合で部署異動が難しいケースです。具体的には、部署異動により家族の介護ができなくなるケースや部署異動により子育てができなくなるケースなどが考えられます。従業員が大きな不利益を被る場合も、部署異動を拒否できる可能性があります。
次に挙げられるのが、
不当な理由で人事異動を命じられたケースです。具体的には、退職へ追い込むため仕事がない部署へ異動する、辱めるため降格させるなどが考えられます。このようなケースは、人事権の濫用に該当するため部署異動を拒否できる可能性があります。
しかし、拒否する従業員は、不当な人事異動であることを立証しなければなりません。実際に拒否することは難しいといえるでしょう。
部署異動は希望できる?
部署異動を希望する場合、上司などに異動願いを提出できます。とはいえ、希望が必ず通るわけではありません。部署異動の決定権は会社側にあるからです。基本的には、希望を伝えるのみに終わることが多いでしょう。
部署異動を希望する場合は、以下の点に配慮することが重要です。
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- 社内公募制度を活用する
- 社内公募制度は、社内の部署が社内で募集をかけて人材を確保する異動制度を指します。基本的な選考方法は、通常の転職活動と同じです。採用されれば、希望する部署へ異動できます。
ただし、すべての企業・部署が実施しているわけではありません。したがって、利用できるケースは限られています。
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- 現在の部署で努力をして結果を出すこと
- 努力できる従業員はどの部署からも歓迎されます。結果を出せる従業員も同様です。また、結果を出すことで、上司などとの交渉を優位に進めやすくなります。
部署異動を希望する場合は、周囲から認めてもらえる努力をすること、結果を出すことが重要です。
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- 異動したい部署で求められる専門性を身につける
- 例えば、資格を取得するなどが考えられます。専門性を身につけることで、人員を補充するときに候補として挙がりやすくなります。また、異動を希望する根拠としても提示できます。
普段の仕事で専門的な知識や技術をアピールしておくことをおすすめします。
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- タイミングを見計らって上司に相談
- 人事異動が決定する前の時期に、面談などを利用して相談するとよいでしょう。
相談をするときは「今の業務があっていないから部署異動したい」など、後ろ向きの理由を伝えることはおすすめできません。どこへ行っても同じ問題を抱えると捉えられてしまうことが多いからです。また、上司の心証を悪くしてしまう恐れもあります。
相談するときは「〇〇をするため部署を異動したい」「〇〇をするため□□に取り組んでいる」など、前向きな理由を伝えるようにしましょう。将来的なキャリアビジョンや組織に対する貢献の仕方まで交えて説明することが重要です。
上司の納得を得られれば、希望する部署へ異動しやすくなる可能性があります。
部署異動が決まったら行いたいこと
希望する、希望しないに関わらず、部署異動が決まったらいくつかの取り組みが必要になります。
特に重要な取り組みは次のとおりです。
引き継ぎ
異動の内示を受けたら、上司に相談しつつ引き継ぎの準備を進めます。
ただし、発令日まで社内外に部署異動を伝えることはできません。混乱を招いてしまう恐れがあるからです。引き継ぎの準備で同僚などに部署異動を伝える必要がある場合は、上司の承認を得るようにしましょう。
引き継ぎは、担当業務を整理して引継書にまとめることなどで行います。引継書にまとめる内容は、業務内容と業務の手順、関連部署の担当者、顧客名簿などです。業務をスムーズに進めるコツを併せて記載しておくと後任者から喜ばれるでしょう。
引き継ぎ業務を行うタイミングは、企業により異なります。いずれにせよ、スケジュールに余裕がある場合は、後任者と一緒に業務を行う期間を設けるとスムーズに引き継ぎを行えます。
社内外へ異動の挨拶
異動が発令されたら、あるいは上司から許可を得たら、社内・社外の関係者へ挨拶をします。
このときに、後任者も紹介しておくと引き継ぎをスムーズに行なえます。タイミングが合わない場合は、メールで挨拶を済ませても構いません。社内では、異動先の上司に直接または電話で挨拶をします(やむを得ない場合はメールでも構いません)。
もちろん、現在の部署でお世話になった上司や同僚なども同様です。異動先でも取引先や現在の上司、同僚などと仕事をするケースがあるため、良好な関係を維持しておくようにしましょう。
社内外へ着任の挨拶
新しい部署に着任したら、社内・社外の関係者へ着任の挨拶をします。新しい部署で挨拶をする場合は、仕事に対する考え方、これまでの経験などを伝えて良い関係を構築できるように心がけるとよいでしょう。
取引先への挨拶は、電話やメールなどで報告してから、直接、出向いて行うようにします。以上の他にも、関係部署などへの挨拶が必要です。着任後の挨拶は、異動後の上司へ挨拶をする際に段取りを確認しておくとスムーズに進められます。
部署異動に納得できないときは転職も選択肢
部署異動について解説しました。残念ながら部署異動は拒否できない可能性が高いです。また、異動願いは出せますが、希望が必ず通るわけではありません。思い描いた部署で働けず納得できないケースは多いでしょう。
会社にも何かしらの目的があるため、まずは前向きに働くことが重要です。どうしても納得できない場合は、転職を検討することもできます。
転職であればさまざまな選択肢があるため、希望する部署で働きやすいといえます。悩んでいる人は、視野を広げてみてはいかがでしょうか。