ビジネスシーンで不祥事やミスなどがあったときに、顛末書を提出しなければならないことがあります。
ただ、今までに顛末書を作成したことがない人の場合、そもそもどのようなものなのか知らないケースも多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では顛末書の概要や基本的な書き方、作成時や提出時の注意点について解説します。
そもそも顛末書とは?
顛末書はビジネスシーンで見かけることのある書類の一つです。また、似たような書類として始末書というものもあります。
両者には一体、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは、顛末書の概要や始末書との違いについて説明します。
顛末書とは
顛末書とは、仕事上でミス・不祥事・不始末などがあった際に、その問題のいきさつを会社に報告するための文書をいいます。
自体が収束したあとに顛末書を作成し、提出を求められるケースが一般的です。
顛末書を提出する目的
それでは、なぜ顛末書を会社に提出する必要があるのでしょうか。その主な目的は「ミスが再び起きないようにする」ことです。
顛末書では問題の一部始終を報告すると同時に、今後同じミスが起きないよう、あわせて再発防止対策を示すことが求められます。つまり、顛末書とは状況報告だけではなく、今後の対処策を提示するためのものなのです。
このように、顛末書の提出は会社と従業員の信頼関係を再構築するための重要な役割を持ちます。
顛末書の提出を求められるシーン
顛末書の提出を求められる場面としては、「商品に不具合が生じたとき」「事務手続きにミスが発生したとき」などが挙げられます。
基本的には社内処分の対象にならないようなミスがあった場合に、顛末書の提出を求められます。
顛末書と始末書の違い
始末書は顛末書と混同されがちな書類です。どちらもミスが発生した際の書類というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、厳密にはそれぞれ書類の目的が異なります。
始末書は、基本的にトラブルやミスが起きた経緯とその謝罪を示すための書類です。再発防止の意識を高めることを主な目的として、従業員に提出させます。
なお、始末書は社内だけではなく、社外向けに提出することがあります。社内向けの始末書は、社内処分に相当する問題が起きたときに提出することが基本です。
社外向けの始末書は、取引先に失礼な対応をしたときや商品に関するトラブルがあったとき、また取引先の備品を壊したときなどに提出します。
一方、顛末書はトラブルが起きた経緯を説明するための書類であり、社内処分にまで至らないレベルの問題に対して提出することが多い傾向です。
つまり、始末書は「反省文」、顛末書は「報告書」としての意味合いが強いという違いがあります。加えて、始末書は社内外に提出する可能性があるのに対し、顛末書は主に社内向けに提出する点も大きな違いです。
このように、始末書と顛末書は作成の主な目的や提出先が異なります。それぞれの特徴を把握し、きちんと使い分けるようにしましょう。
顛末書と謝罪文の違い
顛末書と謝罪文も間違われやすい書類ですが、謝罪文はどちらかといえば始末書に近いものです。
謝罪文は、自分のミスなどが原因で他者に迷惑をかけた際、謝意を伝えるために用いられます。
謝罪の気持ちを伝えるという意味では始末書と同様ですが、始末書に比べると謝罪文のほうが軽いニュアンスがあります。
より具体的にいうと、始末書の提出後は減給や出勤停止などの懲戒処分を受ける可能性がありますが、謝罪文の場合は懲戒処分の可能性はほとんどありません。
顛末書を構成する5つの要素
顛末書にはどのような内容を記載すれば良いのでしょうか。ここでは、顛末書に記載する内容を5つの要素に分けて詳しく解説します。
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- いつ・どこで・何が発生したのか
- 顛末書には問題が発生した日時・場所・その内容について記載する必要があります。
これらの要素が抜けていると、顛末書を読んだ人にトラブルの概要を理解してもらうことができません。詳細を記載しておきましょう。
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- 被害はどの程度か
- 問題が起きたときの状態や、発生の原因を記載します。被害や損害のレベルを簡潔にまとめ、関係者の現状について説明しましょう。
この項目でトラブルの原因を明らかにしておくことで、今後の対策がスムーズに記載できるようになります。
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- 問題にどう対応したのか
- 発生した問題に対し、どのように対処したのか記載します。たとえば、自社の商品に問題があった場合は「顧客から回収作業を行った」という具合です。
読み手に伝わるよう、できる限り詳しく記載しましょう。
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- 今後の再発防止策はどのようなものか
- 問題の再発をどのように予防するのか、今後の対策について記します。どうすれば同じことを繰り返さずに済むのか、しっかりと考えたうえで、文章を整理し記載しましょう。
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- 担当者はどのような見解か
- 顛末書の締めくくりとして、担当者の意見を示します。トラブル発生への謝罪文は、ここに記すことが一般的です。
反省に加えて、再発を防止する意志もきちんと記載しておきましょう。なお、内容は主観で記載するのではなく、客観性を意識することが基本です。
感情を盛り込むのではなく冷静に経過を分析し、時系列に沿ってわかりやすく内容をまとめましょう。
顛末書の作成・提出における注意点
顛末書は事実を冷静に報告するものですが、書類を作成する際はいくつか意識すべき点やマナーもあります。具体的にどのようなことに気を付ければ良いのか、ここでは書類の作成時と提出時における注意点を説明します。
【1】嘘偽りなくわかりやすい内容を心がける
顛末書は上司をはじめとする、自分ではない第三者に読んでもらう書類です。ですから、誰が読んでも正確に内容を理解できるような文章を心がける必要があります。
自分で理解している内容は、つい内容を省略したくなるものです。しかし、読み手は事前知識がないため、一から説明しないとわからないことも多くあります。
客観的に問題が発生した経緯や原因などを分析し、事細かにわかりやすく記載しましょう。また、当然ではありますが、嘘を記載してはいけません。
上司に叱られたくないという気持ちから、嘘を記載したくなる人もいるでしょう。しかし、いくらうまく隠そうとしても、あとで真実が明るみになったときに自分の立場が悪くなってしまいます。
顛末書は嘘偽りなく、誠実に作成することが重要です。
【2】文章構成や言葉選びに気を付ける
顛末書を作成する際は、文章の構成やマナーにも気を付けましょう。インターネット上には顛末書の書き方やテンプレートなども公開されています。
内容を参考にしながら書類を作成することも一案です。言葉選びにも十分注意し、上司など第三者にとって失礼のない文章を心がけましょう。
【3】社内規定を確認する
会社によっては独自のフォーマットや書き方が決まっており、それに沿って顛末書を作成するケースもあります。
この場合、勝手にインターネット上の情報を参考に顛末書を作成すると、書き直すことになるおそれがあるため注意が必要です。あらかじめ社内規定をよく確認することが大切です。
【1】顛末書はなるべく早く提出する
前提として、顛末書はその言葉の通り物事の始めから終わりを説明する必要があるため、トラブル対応中に提出することはありません。
したがって、顛末書の提出は原則トラブルが収束したあとになります。ただし、あまりにも遅い提出は反省が伝わりにくくなるおそれがあり、好ましくありません。
事態が収束したら、できる限り迅速に提出するよう心がけましょう。また、トラブル発生時や途中経過について上司に適宜報告しておくと、信頼関係が深まります。
上司も問題のいきさつをある程度把握することができ、顛末書を受け入れてもらいやすくなるでしょう。
【2】忘れずに捺印する
顛末書は重要なビジネス書類であるため、署名および認印による捺印が必要です。署名の横に忘れないように捺印しましょう。
その際、文字と重なったり捺印が斜めになったりしないよう、気を付ける必要があります。なお、現場責任者などが顛末書を提出する場合は、社判を押すよう指示されるケースもみられます。
不安な場合は、捺印の前に確認しておくと安心です。
【3】日付・宛名・書類作成者を記載する
顛末書を提出する際、意外と多いのが宛名や書類作成者の記載を忘れてしまうことです。これらは誰に向けて作成し、どの人が作成したのかを示す重要な情報といえます。
日付・宛名・作成者の記載はビジネス書類の基本です。記入漏れがないかしっかりと確認したうえで顛末書を提出しましょう。
顛末書の例文【社内・社外向け】
社内に提出する場合の顛末書の例文は以下の通りです。
発生日時:〇年〇月〇日
発生場所:社外〇〇にて発生
内容:〇〇の紛失
当事者:〇〇部〇〇課 〇〇〇〇
状況:社外での使用時に紛失。拾得者からの連絡により発覚
原因:本来は持ち出し禁止となっている〇〇を、当事者が外部に持ち出したため
損害:特になし
対応:問題発生の確認後、即座に〇〇課長に報告。総務部〇〇部長の承認を受けて〇〇を無効化
今後の対策:
・社外持ち出し禁止となっている物品について、改めて周知徹底する
・上記物品を社外へ持ち出すリスクについても同様に周知する
・〇〇の保管場所、保管ルールを徹底する
・保管場所への○○の返却を確認するためのリストの作成、および退勤時のリストへの記入を義務化する
社外に提出する場合の顛末書の例文は以下の通りです。
発生日時:〇年〇月〇日
内容:商品の納品数違い
当事者:〇〇部〇〇課 〇〇〇〇
経緯:納品後、数が間違っていることに気づいた先方からの連絡により発覚
原因:担当者の確認不足
対応:ただちに不足分を発注、〇月〇日に先方へ送付
今後の対策:
・納品前の複数名によるチェックの徹底
担当者コメント:
この度は、私の確認不足によりご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ございませんでした。今後はこのようなことがないよう、ご依頼内容の確認を徹底していく所存であります。
顛末書の提出を減らすためにできることは?ミスの再発防止に役立つポイント
顛末書は「一度きりでいい」「もう書きたくない」と考える人も多いのではないでしょうか。
顛末書の提出を減らすためには、ミスの再発防止に努めることが重要になります。それでは、具体的にどのような点に気をつければ良いのでしょうか。
ここでは、ミスの再発防止のために、日常業務で意識すべきポイントをいくつか紹介します。
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- 確認する習慣をつける
- 何らかの仕事に取り組む際、確認する習慣をつけることもミスの再発防止に有効です。
特に、以前は確認作業をしていたのに、仕事に慣れてからは怠っているという人は要注意です。再度きちんと確認することを意識してみましょう。
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- 自分が対応できる範囲の仕事をする
- 仕事でミスをしないためには、自分が対応できる仕事の範囲を知ることも重要です。
一人で多くの仕事を抱え込みすぎると、どうしても焦りから作業の一つひとつが雑になってしまうことがあります。その結果、ミスの発生につながる可能性が高まるのです。
抱えている仕事が多い場合は、上司に相談して割り振りを見直してもらうことも一案です。また、チーム内のメンバーで作業を分担し、特定の人にだけ負担がかかりすぎないように助け合うことも良いでしょう。
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- 適度に休みをとる
- 常に仕事に追われていると、心身が疲労して集中力が低下してしまいます。その結果、仕事の生産性や精度が下がり、ミスが増える原因にもつながります。
体調管理も重要な仕事の一つです。仕事の疲れやストレスがたまっているときは、無理をせず適度に休みを取るよう心がけましょう。
上司に相談して休めるときにはしっかりと休むことが、パフォーマンス維持のために重要です。
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- スキルアップを目指す
- 日頃から勉強をしてスキルアップをすることもミスの防止に役立ちます。スキルが上がると仕事の処理速度がアップし、正確性も増します。
効率的に働くことでゆとりが生まれ、確認作業などにあてる時間を確保しやすくなるのです。その結果、時間的にも精神的にも余裕が生まれ、ミスの削減につなげられるでしょう。
顛末書は信頼を取り戻すための重要な書類!書き方をマスターしておこう
仕事におけるベストは、やはり顛末書そのものを提出するような問題を起こさないことでしょう。とはいえ、どんなに気を付けているつもりでも、意図せずミスは発生してしまうものです。
だからこそ、いざというときにスマートに顛末書を提出できるよう、書き方や注意点を把握しておくことが重要になります。
わかりやすくポイントを押さえた顛末書を提出することで、社内外の信頼を取り戻せる可能性が高まります。予期せぬトラブルに備えて、しっかりと顛末書の書き方をマスターしておきましょう。