DX人材とは?6つのポジションとそれぞれの役割やマインドセットを徹底解説

作成日:2021.07.12 更新日:2024.02.14

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にはDX人材の存在が欠かせません。 そのため、DXを導入する企業では、同時にDX人材を募集することになります。DX人材になるためには、こういった企業に就職することが一般的な方法です。 そのためには、企業の中でどのような役割を担えるかを明確にしておくことが必要になります。このコラムでは、DXやDX人材の基礎知識と、DX人材の主な役割や必要なマインドセットについて解説します。

DXとDX人材とは?その解説とDX導入事例3選

企業の変革に不可欠なDXには、その運用を担うDX人材の存在が欠かせません。ここでは、DXとDX人材の解説とともに、DXを導入して成長を遂げた企業の事例を紹介します。
  • DXとはデジタル技術で企業活動に変革を起こすこと
    Digital Transformation(DX)の「Transformation」とは、「変革」を意味する英語です。経済産業省による「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」によると、DXは次のように定義されています。 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応しながら、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズをもとに、製品・サービス・ビジネスモデルなどを変革すること。 また、業務そのものや組織・プロセス・企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。 つまり、ITなどのデジタル技術を活用することによって、企業活動や文化に大きな変革をもたらし、収益を増加させる仕組みを構築してさらなる成長を実現すること」がDXの主な役割ということになります。
  • DX人材には大きく分けて2つの役割がある
    DXを導入して会社や業界に変革をもたらした企業に共通しているのは、優秀なDX人材の存在です。 DX人材の定義に関しては、経済産業省による「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」で、「業務内容に精通し、デジタルで可能なことを理解しながら、DXの取り組みをリードまたは着実に実行できる人材」と、「デジタル技術やデータ活用に精通した人材」という2つ人物像が設定されています。 つまり、DX人材には大きく分けて「DXを活用した取り組みを構築して導き実行できる人材」と、「DXを技術的な面から支える人材」という2つの人材が存在するということになります。 この2つの人材にはそれぞれ複数のポジションがあって、企業がDX人材を求める際には、それらポジション名で募集するのが一般的な方法です。
  • DXはすでに多くの企業に変革をもたらしている
    DXを導入したことで、既にいくつかの企業が急成長を遂げています。それら企業に共通しているのは、ITを駆使した独自のシステム開発です。 大手アパレル通販サイトが取り組んだのは、簡単にインターネットで商品が購入できるシステムの構築でした。専用のアプリや最適なサイズが分かるシステムを開発し、作業工程もデジタル化しています。 大手タクシー会社が取り組んだのは、独自の配車アプリと決済機能や電子公告などがセットになったタブレットの開発です。そのシステムを他社にも提供して、業界全体のDX推進にも貢献しています。全国で家庭教師派遣業を展開する企業が取り組んだのは、オンライン授業の推進です。 業界初の映像学習サービスを開発し、どこに住んでいても質の高い授業が受けられるシステムを構築しています。

複数のポジションの役割と必要なスキルとは

役割が2つに大別されるDX人材には、それぞれに複数のポジションがあります。 ここでは、それらポジションの役割や必要なスキルについて解説します。

DX人材には主に6つのポジションがある

主なDX人材は、ビジネスプロデューサー・ビジネスデザイナー・データサイエンティスト・ITアーキテクト・UXデザイナー・エンジニアの6つです。 それぞれDXの構築と推進に欠かせない重要な役割を担っています。 大きなカテゴリーのうえでは、ビジネスプロデューサー・ビジネスデザイナー・データサイエンティストが「DXを活用した取り組みを構築して導き実行できる人材」で、それ以外のポジションが「DXを技術的な面から支える人材」ということになります。

ビジネスプロデューサーはDX人材のリーダー的存在

ビジネスプロデューサーは、デジタルやDXを含む自社のビジネス戦略や戦術を理解したうえで、目標に向かって社員を導いていく役割を担います。 企業によっては、役員の1人として経営自体に関わるケースも少なくありません。 必要になる主なスキルには、「ビジネス戦略や戦術の構築力」「企業内調整力」の2つがあります。 「ビジネス戦略や戦術の構築力」は、自社のビジネスや経営状態を理解・把握して、さらなる成長のために必要な戦略や戦術を考え、具体化する能力です。冷静な分析力と豊かな発想力が必要になります。 「企業内調整力」は、ボトムアップに必要な現場と上層部との間や、各部署間の連携を取り持つ能力のことです。デジタルやDXへの理解力や高いコミュニケーション能力が必要とされます。

ビジネスデザイナーはDX人材のアイデアマン

ビジネスデザイナーは、デジタルやDXに関するアイデアを考えて立案し推進するのが主な役割です。 ビジネスプロデューサーと連携しながら働くことが多いポジションでもあります。必要になる主なスキルは、「新規事業の企画力」と「新規事業の構築力」です。 「新規事業の企画力」は、ビジネスプロデューサーが提案する戦略や戦術に従って新しい事業やビジネスモデルを立案する能力のことで、上層部を納得させられるだけの「企画書の作成能力」も含まれます。 「新規事業の構築力」は、作成した企画書に沿ってビジネスを構築する能力で、ビジネスプロデューサーや現場との連携を密にしながら企画を形にしていく力のことです。

データサイエンティストは意思決定のサポーター

データサイエンティストは、さまざまなデータを用いて意思決定者が的確な決断を下すためのサポートを行います。 必要なスキルは、「統計的に解析する能力」「ITに関する能力」「ビジネスに関する基礎知識」です。「統計的に解析する能力」は必須のスキルで、データ解析能力だけでなく、高度な数学の知識も必要とされます。 「ITに関する能力」はプログラミングに関するスキルや、データ解析に必要なソフトウェアを扱うスキルのことです。 「ビジネスに関する基礎知識」ではプロジェクトに関する理解力や、解析結果をわかりやすく説明できるプレゼン能力などが求められます。

ITアーキテクトはWebサイトの設計士

ITアーキテクトの役割は、ビジネスデザイナーの企画書に沿って、自社のDXに最適なWebシステムの設計図を作成することです。 必要なスキルには「要件定義能力」や「経営に関する基礎知識」などがあります。 「要件定義能力」は、Webシステム開発に必要な要求や機能などを、開発に関わるエンジニアすべてが理解できるようにまとめるスキルのことです。DXの構築にはデジタルと経営の全体を見据える必要があるため、ITアーキテクトには「経営に関する基礎知識」も要求されます。

UXデザイナーは使いやすさの専門家

UXデザイナーは、Webサイトを使いやすくするためのデザインが主な仕事です。 デザインといっても装飾ではなく、ユーザーの体験をサポートする機能を設計するのが主な役割になります。必要とされるスキルは、「ユーザー視点の思考力」や「マーケティングやSEOに関する基礎知識」「UXデザインを言語化する能力」などです。 UXデザイナーは、「ユーザーの使いやすさ」をデザインするのが役割のため、ユーザー視点でWebサイトの使い勝手を考える能力が不可欠とされています。 また、ユーザーがどのようなWebサイトを求めているかを知るためには、マーケティングやSEOの基礎知識が必要です。 UXデザイナーは、考案したデザインを自分で構築することができません。 そのため、エンジニアにデザインを伝える言語能力が必須になります。専門用語だけでなく、豊かな日本語能力も重要です。

エンジニアは最後の仕上げを担う技術者

エンジニアは、上記のDX人材が考案したデジタルやDXに関するシステムの実装や構築を担います。 必要なスキルは、「エンジニアとしての能力」「要件定義能力と設計能力」「マネージメント能力」などです。 エンジニアとしてのスキルが必要なのは当然ですが、DXで扱うシステムは生産・流通・店舗と多岐にわたります。そのため、DX人材では、さまざまなシステムに対応できるスキルを持ったエンジニアが重宝される傾向にあります。 「要件定義能力と設計能力」は、ITアーキテクトだけでなくエンジニアにも必要なスキルです。 このスキルがあることで、ITアーキテクトが作成した要件定義を深く理解して議論することが可能になります。 また、自分で要件定義や設計を行えば、すべての工程を1人でこなすことも不可能ではありません。エンジニアのリーダーに抜擢された場合には、チームをまとめる「マネージメント能力」も大切なスキルになります。

企業から求められるDX人材のマインドセットとは

マインドセットは、教育や経験または先入観などから形成された考え方や固定観念のことです。 マインドセットには固定型と成長型があります。固定型は「能力は生まれつきで変えられない」といった考え方で、成長型は「能力は努力次第で変えられる」といった考え方のことです。 もちろん、企業がDX人材に求めるマインドセットは成長型です。 具体的には、「現状に満足せず変えようとする」「新しいビジネスモデルやシステムを生み出そうと努力する」「自分で考えて動き課題を解決しようとする」「考え方に柔軟性があり、大胆に転換できる」「変化を恐れない」「目先の結果で判断や評価を下さない」といった人材が求められています。

DX人材が不足している2つの理由

多くの経営者は自社や業界の成長のためにDXが必要なことは理解していますが、DX人材は不足気味です。その主な理由として次の2点が挙げられます。
  • 既存システムの問題
    多くの企業では、既存のシステムが事業やプロジェクトごとに構築されています。 そのため、部門間やプロジェクト間の横断的なデータ活用が困難になっている場合が少なくありません。 また、無計画で過剰なカスタマイズによって既存システムが複雑化してしまい、多くの企業でシステムを変更・更新することが技術的にもコスト面でも困難になっています。
  • 現場サイドの抵抗
    経営者の多くはDXの推進を望んでいますが、そのためには既存システムの問題を解決しなければいけません。 ただし、それを行うには大胆な業務の見直しが必要です。現場サイドに過大な負担を生じさせることになるため、なかなか同意が得られずにいるのです。

DX人材への需要が高まる可能性がある

DXの推進が停滞を続けることによって、2025年以降、最大で12兆円/年の経済損失が生じる可能性があるとされています。 これが「2025年の崖」と呼ばれる問題です。こういった事態を避けるために、日本では国を挙げてDXの推進に取り組んでいます。 こういった状況とDX人材の不足という2つの原因から、待遇面の向上が考えられます。売り手市場になる可能性もあるため、待遇面だけでなく自分が働きやすい企業を見極めることが大切です。

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