組織の中では多様な人材が求められます。ある分野に特化したスペシャリストが必要な場合もあれば、幅広い知識や経験を持つゼネラリストもビジネスの現場には欠かせません。
人材登用の世界では、両者をバランスよく組織の中に配置することが重要です。ただ、スペシャリストという言葉は一般的ですが、ゼネラリストという言葉は馴染みが薄い人も多いでしょう。
そこで今回は、ゼネラリストについて、スペシャリストと対比して解説します。
ゼネラリストとは?ゼネラリストの定義と特徴
ゼネラリストとは、幅広い知識に精通した多角的な視点を持つ人材のことです。
英語の「general(ゼネラル)」が語源で、その意味は「全体的、全般的」と翻訳することができます。また、よりネイティブ的な発音に近い「ジェネラリスト」と呼称されることもあります。
主に人材登用などのビジネスシーンで用いられ、スペシャリストとの対比で俎上に挙げられることが多い用語です。
ゼネラリストってどういう人?3つの特徴
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- 豊富な知識と多角的な視点
- ゼネラリストと呼ばれる人材は、特定の分野に知識や経験が偏っているのではなく、幅広いスキルや知識を普遍的に備えている点に大きな特徴があります。
たとえば、過去に多様な職種や部署を経験し、豊富な分野の知識を有している人材は、典型的なゼネラリストと呼ぶことができるでしょう。
多様な知識と経験の裏付けによって、物事を多角的な視点で見ることに長けており、バランス感覚に優れた独自の意見を出すことができます。
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- 客観的な判断力を有する
- 客観的な判断力を備えている点もゼネラリストに特徴的な能力です。
ゼネラリストは経理や人事、商品企画といったビジネスの幅広い分野の知識・経験に精通している人材です。そのため、特定の部署の意見や理屈に偏らず、客観的かつ公正な視野から意見や発言を出すことができます。
常に全体の利益を追求し、公平な立場で組織を見渡せることから、ゼネラリストは管理職や監督職として特に重宝される存在です。
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- 臨機応変な対応力
- 組織運営において、不測の事態が生じることは決して珍しいことではありません。
病気や家族の不幸を理由に人材に欠員が出たり、社会情勢の変化によって以前の常識が通用しなくなったりなど、その都度臨機応変な対応力が求められます。
その点、ゼネラリストは知識や技能の幅が広いため、不測の事態に直面したときでも、過去の経験から最適解を導き出すことができます。
このように、さまざまな事態に備えて臨機応変な対応力を有している点もゼネラリストの特徴です。
こんなゼネラリストはいらない?ゼネラリストの欠点
多様な分野の知識を持ち、広い視野から柔軟な対応ができるゼネラリストですが、知識が浅くなりがちな点は玉に瑕です。
採用活動においては、わかりやすい特殊能力を示せる人材が重宝される傾向にあります。その点、ゼネラリストは経験が豊富な一方、器用貧乏にもなりがちで、アピールできる特徴に乏しいケースが少なくありません。
豊富な知識や経験を生かすゼネラリストを目指すなら、単に経験や知識を積むだけではなく、現実社会に活かせるような生きた知識、生きた経験を身に付けることが重要だといえるでしょう。
スペシャリストのゼネラリストとの違い
ゼネラリストとスペシャリストは、対義語に当たる言葉です。「万能家」と訳されるゼネラリストに対して、スペシャリストは「専門家」「専門職」などと訳されます。
ここでは、スペシャリストの特徴から、ゼネラリストとの違いを見ていきましょう。
スペシャリストは特定の分野に特化した技術者
スペシャリストとは、ある特定の分野を専門的に修めた人材のことです。
非常に高い専門性を有し、その分野に関して高い技能と知識を有します。長い経験の末、獲得した資格やスキルを武器に、一点突破的に活躍する人材がスペシャリストに当たります。
弁護士や医師といった資格が必要な専門職や、高いスキルが要求されるエンジニア系の人材が主にスペシャリストと呼ばれます。
ゼネラリストとの違い
ひろく知識を修めた万能型であるゼネラリストに対して、スペシャリストは特定分野のプロフェッショナルです。
ゼネラリストが「広く浅く」だとすれば、スペシャリストは「狭く深く」といったところでしょう。また、スペシャリストが「専門職」だとすれば、ゼネラリストは「総合職」です。
役員やプロデューサー、マネジメントなどが得意なゼネラリストに対して、スペシャリストはディレクターや研究員、経理部門などが主たる職場です。
スペシャリストの苦手分野
特定の分野には稀有な実力を発揮する一方、スペシャリストは得意分野以外の対応が苦手な傾向があります。
たとえば、対応範囲が狭く専門外の知識に乏しかったり、多角的な視野が求められる仕事は苦手だったりすることも珍しくありません。
その点、専門分野は持たずとも、多様な知識と経験を持ち、広い視野から全体を見通せるゼネラリストとは対照的です。
組織においては、どちらが欠けても上手く回っていかず、スペシャリストとゼネラリストを適材適所に配置することが理想とされます。
あなたはどちら?スペシャリストとゼネラリストの適性
スペシャリストとゼネラリストは、それぞれ求められる役割が異なり、人によって向き不向きがあります。
どちらも組織運営には欠かすことのできない人材なので、どちらの道を進むべきかは、まず自分の適性を見極めて方向性をしっかり定めることが大切です。
以下、スペシャリストに向いている人とゼネラリストに向いている人の適性について解説します。
スペシャリストに向いている人
スペシャリストは、特定分野に秀でた一点集中型の人材です。そんなスペシャリストになるためには、まずひとつのことに熱中して知識や技能を極めなければなりません。
そのため、誰にも負けない得意分野の存在や、興味のあることに対する強い探求心は、スペシャリストを目指すうえで欠かせない能力だといえます。
また、どれだけ好きな分野であっても、極めるためには意志や忍耐力も必要になるでしょう。
ひとつのことを黙々とこなす集中力があって、はまったらとことんやり込むような凝り性な人がスペシャリストに向いているといえます。
長く続いている趣味があったり、好きな分野が決まっていたりする場合は、その趣味や分野を生かしてスペシャリストを目指してみても良いでしょう。
ゼネラリストに向いている人
在ゼネラリストには、臨機応変な対応力や、人と人との間を取り持つコミュニケーション能力が求められます。
そのため、自己主張が強い人より、他人の意見に耳を傾けられる柔軟性を持った人に適性があるといえます。
また、豊富な経験や幅広い知識もゼネラリストには必要です。特定分野に入れ込む性格より、いろいろなことに興味を持つ多趣味な人のほうがゼネラリストに向いているといえるでしょう。
ゼネラリストの主な役職は管理職や監督職です。その視点で見れば、人をまとめる立場や上に立って指導した経験を持つ人材はゼネラリスト向きです。
過去に部活のキャプテンを経験していたり、学校で生徒会長を務めたことがあったりするなら、その経験はゼネラリストを目指すうえで大いに活かすことができます。
幅広い知識が求められるので、学習意欲が旺盛で、学校の成績が満遍なく取れている人ほどゼネラリスト向きの適性を備えているといえます。
転職は?出世は?ゼネラリストのメリット・デメリット
ゼネラリストは、いってみれば組織のまとめ役です。組織が円滑に回っていくためには、現場を広く見渡して全体をまとめられるゼネラリストの存在が不可欠です。
ただ、ゼネラリストはスペシャリストに比べてかけがえの効く存在でもあります。特定分野の専門家であるスペシャリストは、その人がいなければそもそも成り立たない業務も少なくありません。
同じレベルの技能を備えたスペシャリストは見つけることが難しく、人材登用の世界でも特定分野のスペシャリストは貴重な存在として重宝される傾向にあることは事実です。
就職や転職活動には不利?ゼネラリストのデメリット
ビジネス環境は、以前にも増して複雑化・細分化していく傾向にあります。
そうした時代の中、幅広い知識と経験はあっても、特定分野に特化したスキルを持たないゼネラリストは、就職や転職活動において不利な状況に立たされているという実情があります。
社会や経済のグローバル化が進行し、特定分野で突出した技能を持つ企業が生き残る社会では、求められる人材も内部調整に優れたゼネラリストより成長分野に特化したスペシャリストに集中しがちです。
企業に対して得意分野をアピールしづらく、他の人材との差別化が難しいゼネラリストは、採用活動においては少しデメリットを感じることが多くなるかもしれません。
出世には有利!ゼネラリストのメリット
どれだけ優秀なスペシャリストを揃えていても、それをまとめる役がいなければ組織は円滑に回っていきません。むしろ、業務が細分化し、スペシャリストが増えた時代だからこそ、それをまとめるゼネラリストの存在も見直されています。
未来的な視点を持ち、将来も含めて多角的な視野を持ったゼネラリストであれば、企業にとっても必要な人材です。
「器用貧乏」に陥らず、活きた知識を備えたゼネラリストなら、就職や転職活動においても決して不利な立場に甘んじることなく自分の存在をアピールできるでしょう。
また、まとめ役であるゼネラリストは、組織内において確固たるポジションを築きやすいというメリットもあります。
組織のまとめ役とは、すなわち管理職や監督職です。管理職や監督職は、人の上に立つ役職ですから、高い経験と知識を持つ人材しか任せられることのないポストです。
ゼネラリストとして経験を積めば、早い段階で管理職などの高いポストに就くことも難しくなく、その意味ではスペシャリストより出世には有利な立場にあるといえます。
しかも、一点特化型の能力ではないため、ゼネラリストは「つぶしが効く」点も大きなメリットです。就職や転職でも、幅広い選択肢から仕事を選ぶことができ、自分の理想の職場を見つけやすい点も魅力だといえます。
業務の細分化が進む時代だからこそゼネラリストの需要あり
グローバル化や業務の細分化に対応するため、人材活用の現場ではスペシャリストが求められる傾向にあります。しかし、ゼネラリストに対するニーズが縮小したわけではありません。
組織には必ずゼネラリストの存在が欠かせず、むしろスペシャリストが重宝される時代だからこそ、それをまとめるゼネラリストの需要も高まっているといえるのです。
また、企業の上層部に上り詰めるためには特定分野に特化しているだけでは叶いません。多様な部署や仕事を経験して、幅広い知識を備えてこそ出世街道に乗ることができます。
そうしたキャリア形成の意味でも、ゼネラリストを目指す価値は大きいといえます。
コミュニケーション能力に長けた多趣味な野心家や、知識欲旺盛な万能タイプは、スペシャリストよりゼネラリストを目指したほうが、自身のキャリア形成を有利に進めることができるでしょう。