さまざまなところで「Z世代」というワードを耳にするようになりました。
漠然とイメージできる人は少なくないでしょう。しかし、具体的にどのような人たちを指しているのか、他の世代との違いまで把握している人はあまり多くはないのではないでしょうか。
本記事ではZ世代について消費や労働に対する考え方と、さらには他の世代の特徴などもあわせて解説します。
Z世代とはどのような世代?
Z世代とは、1990年代半ばから2012年頃までに生まれた人を指す言葉です。なかには、Z世代の生まれた年代を1997年から2012年までと限定しているケースもみられます。
ただ、明確な定義はありません。おおよそこのあたりの年代に生まれた人たちはZ世代とまとめて呼ばれることが多いと認識しておくとよいでしょう。
もともとアメリカでこの世代に生まれた人たちが「GenerationZ(ジェネレーション・ゼット)」と呼ばれていたことから、そのまま日本語訳されてZ世代と呼ばれるようになっています。
アメリカでは1960年代後半から1980年頃までに生まれた世代を「ジェネレーション・エックス(X世代)」と呼んでおり、その次を「Y世代」と表現したため、アルファベット順にZ世代と呼ばれるようになった経緯があります。
Z世代にみられる特徴とは
世代ごとに価値観や考え方は異なるものですが、Z世代にはどのような特徴があるのでしょうか。いくつかみていきましょう。
多様性と自分らしさを重視
時代を追うごとに得られる情報の量や幅は増えていきます。
Z世代はこれまでの世代と比較しても非常に多くの情報の中で育ってきており、小さな頃から多様な価値観や文化に触れてきたことから、多様性を受け入れることに抵抗を感じない世代といえます。
また、多様性を認めるとともに、自分らしさを重視する傾向が強い点もZ世代の特徴の一つです。「自分も人と違ってよいのだ」という価値観をもっている人が非常に多い傾向があるといえるでしょう。
承認欲求が強い傾向がある
自分らしさを重視することから、その自分らしさをアピールしたい欲求を強く持っている世代でもあります。他人の目が気になり、評価を得たいと考える承認欲求の強い人が多いといえるでしょう。
Z世代は「デジタルネイティブ」とも呼ばれており、インターネットにつながるスマートフォンなどの機器をとても身近なものと感じています。
個人でもSNSなどでの自己表現が可能な時代となり、実際に競うように自身を主張する人がZ世代に多いことからも、この承認欲求の強い傾向がうかがえるのではないでしょうか。
デジタルネイティブだからこその特徴ともいえるでしょう。
マスメディアよりもインターネット媒体を重視
テレビや新聞などのマスメディアよりも、SNSや動画サイトからの情報を重視する傾向もZ世代にはあります。
これもやはりデジタルネイティブの世代だからこその特徴でしょう。信頼性の観点からのみではなく、そもそも情報収集をインターネットに頼る世代です。
マスメディアの発信する情報よりも、一般消費者やインフルエンサーと呼ばれる人たちの発信を重視する傾向がこの世代にはみられます。
安定志向や現実主義の傾向がある
日本においてはあまり景気のよいとはいえない時代に育ったことや多くの情報に触れられることから、非常に現実的に物事を考える傾向がZ世代にはみられます。
リスクのあるチャレンジをして大きな成果を得るよりも、小さな成果でも構わないから確実な方法や道を選ぶ人が多いといえるでしょう。
働き方や消費行動などをみても非常に堅実的な面がみられます。承認欲求は強いものの、低コストで自身を高められる方法を選ぶあたりは、やはり現実主義的であるといえるのではないでしょうか。
Z世代以外の世代の名称や特徴とは
Z世代について知るためには、他の世代を知ることも重要です。どのような特徴の違いがあるのか、それぞれの世代についてもみていきましょう。
X世代とは
Z世代と呼ばれるようになったきっかけでもあり、1965年頃から1980年頃までに生まれた人たちが「X世代」です。
子供の頃を高度経済成長とともに過ごしていた世代ですが、それが終わりを迎えた時代を過ごした経験をもつ世代でもあります。一般の人が日常的に使えるデジタル機器はほとんど普及していませんでした。
特にインターネットに触れるのは大人になってからであったため、Z世代のデジタルネイティブに対して、X世代は「デジタルイミグラント(デジタル移民)」などと呼ばれています。
成長と停滞を経験しているX世代は社会の移り変わりへの適応能力が高いといわれており、果敢にチャレンジするような強い意欲をもった人たちも少なくありません。
一方で、日本では氷河期世代にもあたるため、格差を強く感じる世代ともいえるでしょう。
ミレニアム世代とは
1980年代はじめから1990年代半ばまでに生まれた人たちが「ミレニアム世代」です。ミレニアル世代やY世代と呼ばれることもあります。
幼少期は経済的にバブルだったこともあり、その中で育ったミレニアム世代の人たちの多くは理想主義的で消費にも積極的な傾向がみられます。
バブル時代の影響から、チャレンジ精神旺盛な人や成果のためには努力をいとわないと考える人も少なくありません。
一方で、生まれた頃や幼少期にはバブルが崩壊し景気低迷期に突入していた人たちも多いため、堅実で現実的な考え方をする人が徐々に増えてきた世代でもあります。
Z世代は将来を見据え投資などにも興味を持ちはじめていますが、Y世代は投資で失敗した親世代を間近でみており、また、そのような親世代からの教育も影響し貯蓄を重視する人も多く存在する世代です。
デジタル機器の登場や進化・発展にともない、Z世代のようなデジタルネイティブではないものの、これまでと比べITリテラシーの高い世代であるともいえるでしょう。
ただ、テレビ全盛期で育ったことから、インターネット媒体以外からも情報収集をする傾向が一部のY世代には未だに根強くみられます。
α世代とは
2013年以降に生まれ、Z世代のあとの世代となるのが「α世代」です。急速な時代の変化の中で生まれたα世代は、Z世代よりもさらにデジタルやインターネットの世界に精通する世代となるでしょう。
リアルとオンラインを明確に分ける感覚を、もはやもたない人たちも出てくるのではないでしょうか。現在では想像もつかないような価値観をもつ人たちが多く現れることは間違いありません。
α世代が社会へと進出する頃には、世界はまったく異なるものとなっているでしょう。
Z世代の消費に対する価値観とは
世代や時代が変われば、それぞれで消費に対する価値観も変わります。Z世代はどのような消費行動をとる傾向があるのでしょうか。
特徴的なものをピックアップして解説していきます。
モノ消費よりもコト消費
時計や車、洋服など所有できるものにお金を払うことを「モノ消費」といいます。
それに対して、経験をお金で買うことを「コト消費」といいますが、Z世代はどちらかといえばコト消費を好む傾向があるようです。イベントへの参加や旅行などがコト消費にあたります。
モノを購入する場合でも、それを活用して新たな行動を起こしたり何かしらを体験したりすることで欲求を満たす傾向も強いでしょう。
SNSなどで購入したものを披露するZ世代が多いことが、まさにそれを表しています。
コストパフォーマンスを重視
説明したようにZ世代は堅実かつ現実主義的であるため、消費に関してはコストパフォーマンスを重視する傾向もみられます。
必要がなければ購入は控えるなど、価格と自分にとっての価値とのバランスを冷静に見極めたうえで購入するか否かを決定しているといえるでしょう。
ハイブランドのものにこだわる傾向もあまりみられません。単に安いものを好んで買うというわけではなく、あくまでもコストパフォーマンスが適切か否かで選んでいる点がZ世代の特徴です。
企業としてはブランド力や歴史などが通用しなくなってきているといえます。今後さらに消費が増加すると考えられるZ世代へ向けたマーケティングを丁寧に行っていく必要がありそうです。
個性や自己表現を重視
自分らしさを重視し、かつ承認欲求が強い世代であるため、消費にも個性や自己表現を重んじる傾向がみられます。
これまでの世代の大半の人たちは他者と異なることを忌避する傾向が強かったのではないでしょうか。
しかし、Z世代は自分の価値観に合ったものであれば他者と異なっていたとしても手に入れようとする人が少なくありません。
Z世代以前にも個性や自己表現を重視する人たちはいましたが、これまでの世代の一部の人は他者と異なるものをあえて選択し、個性を主張していました。
それに対してZ世代は、他者と異なっているかどうかも気にしていない人が多いといえるでしょう。自らの感覚に忠実に従いながら消費を行う点がZ世代の特徴です。
Z世代の望む働き方とは
Z世代特有の傾向は働き方や仕事選びにもみられます。
この世代は働くことに対してどのような価値観をもっているのでしょうか。4つの特徴を挙げながら解説していきます。
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- プライベートも重視する傾向がある
- プライベートな時間も大切にしながら仕事をしたいと考える人たちが、Z世代には多くなってきています。以前からそのような考えをもつ人はいましたが、より増加傾向にあるといえるでしょう。
消費にコストパフォーマンスを重視する人が増えているように、仕事に対してもタイムパフォーマンス(時間対効果)を重視する人が増えているようです。
それにより仕事とプライベートの双方を充実させる「ワークライフインテグレーション」を実現することに重きを置いている世代といえます。
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- 副業にも積極的である
- 本業とは別に副業にも積極的に取り組む人たちも少なくありません。
プライベートな時間を充実させ、そこで新たな収入源を確保する人がZ世代には増えてきています。インターネットで気軽にビジネスをはじめられる環境も、そうした考え方や行動に拍車をかけているのでしょう。
趣味と実益を兼ねる考え方をもつ人が増えているのもZ世代の特徴の一つです。
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- 転職に対して肯定的である
- 日本では転職に対してネガティブなイメージをもつ人も少なくありません。
しかし、Z世代では転職に肯定的な人たちが多くいます。ワークライフインテグレーションが実現できないと感じれば、即座に他の企業や業界へと転職する人も少なくないのです。
しばしば忍耐力がないなどと批判されることもありますが、多様な価値観や自己表現を重視するZ世代にとっては自然かつ合理的な仕事への向き合い方といえるでしょう。
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- 自由な働き方と安定した環境を求める
- Z世代ではフリーランスを目指す人も少なくありませんが、組織に属していたとしてもリモートワークやフレックス制度を取り入れているなど自由な働き方ができる企業・業界を選択する傾向もみられます。
それでいて堅実で現実主義的でもあるZ世代は、一定の収入や将来性などを見据え安定した環境を求める傾向もあるようです。
自身が働きやすいと感じる職場を探し出すことに対しては貪欲であるといえるでしょう。