転職市場でしばしば耳にする「ジョブホッパー」という言葉は、どのような意味で使われている言葉なのでしょうか。一般的にはネガティブなイメージを抱かれることも少なくありません。
しかし、キャリアを構築する上で武器となるケースもあります。本記事ではジョブホッパーの意味や定義から、キャリアへの活かし方まで解説します。
自身のキャリアを丁寧に見直すことで、転職を有利に進められる可能性が高まるでしょう。
ジョブホッパーの意味と定義
ジョブホッパーの言葉が表す意味と、具体的な定義について考えてみます。一般的にどのような意味で使われているのかを把握しておきましょう。
ジョブホッパーとは
ジョブホッパーは、短期間で転職を繰り返す人を指す言葉です。
英語では「job hopper」と表記され、欧米でも日本と同じような意味合いで使われています。短期間で転職を繰り返すことは「job hopping」という言葉で表されます。
hoppingには「あちこち渡り歩く」「忙しく動き回る」などの意味があり、そこから職場を頻繁に変える人をジョブホッパーと表現するようになりました。
ジョブホッパーの定義
ジョブホッパーという言葉に明確な定義はありません。具体的な年数や回数に関する線引きはありませんが、1つの職場を2〜3年以内で辞めることを繰り返している人とイメージしておくとよいでしょう。
第二新卒者のように新卒で採用された企業を数年以内に辞めるだけではジョブホッパーとはなりません。
また、転職を複数回していたとしても、1つの企業に5年や10年以上勤めているのであれば、それもジョブホッパーとは呼ばれないでしょう。
20代のうちに3回以上の転職を経験している人は、一般的にはジョブホッパーと認識されると考えておくとよいのではないでしょうか。
ジョブホッパーとキャリアビルダーの違いとは
転職を繰り返し従事する会社や仕事を何度も変える人を指す言葉に「キャリアビルダー」があります。
ジョブホッパーとの違いはどこにあるのでしょうか。キャリアビルダーの意味も含めて確認しておきましょう。
キャリアビルダーとは
キャリアビルダーは、自身のキャリアのよりよい構築を目指し転職を繰り返す人を指す言葉です。このような行為そのものは「キャリアビルディング」と表現されることもあります。
建物を作るときのようにキャリアを上へと積み上げていくイメージをもつと理解しやすいのではないでしょうか。キャリアビルダーは、転職をキャリアアップのための手段として捉えているという特徴もあります。
ジョブホッパーとキャリアビルダーの違い
ジョブホッパーもキャリアビルダーも転職を繰り返すという意味では大差はありません。しかし、ジョブホッパーは“短期間”に“複数回”という点が強調されることが多いでしょう。
最大の違いは、キャリア構築への影響です。ジョブホッパーは転職をキャリアの構築を目的として繰り返しているとは限りません。
一方でキャリアビルダーの転職行動はあくまでもキャリアアップを目的としています。そのため、キャリアビルダーには転職の際に選ぶ業界や職種や立場、あるいは活かせる資格・能力などには一貫性がみられるのです。
結果、ジョブホッパーは転職後に年収やポジションが下がる傾向がみられ、キャリアビルダーは逆に転職のたびに年収やポジションが上昇する傾向へとつながるという違いもあります。
転職の理由やキャリアの計画性という点で両者には大きな違いがあると認識しておきましょう。
ジョブホッパーにもメリットはある
ジョブホッパーは、どちらかといえばネガティブなイメージをもたれることが少なくありません。しかし、転職回数が多い人だからこそのメリットもあります。
この点を理解することで転職回数の多さを失敗とせず、むしろキャリアを成功へと導きやすくなるのではないでしょうか。
豊富な経験や人脈をもっている
転職回数が多いということは、それだけ多くの会社や業界、職種で経験を積んでいると考えられます。
採用する企業にとって経験の多さは必ずしもデメリットとはならないでしょう。むしろ経験豊富な人材は多くの知識や知恵をもっているケースも少なくありません。
また、これまで携わってきた人の数も多いことから、人脈の多さもジョブホッパーのメリットとなり得ます。
同じ業界や関連した分野などの人脈を上手に活用できれば、転職先でもそれを活かして業績を上げやすくなるでしょう。
行動力や積極性をもっている
会社を辞めたい、別の仕事に従事したいなどと思った人のすべてが退職という行動に出られるわけではありません。
転職を繰り返しているということは、その都度転職活動を行っていることになります。ポジティブに捉えれば、ジョブホッパーは行動力や積極性に長けているといえるでしょう。
多くの人が勇気を出せずに行動できないことや面倒だと感じることを実際にやり続けられる点は、大きなメリットであり武器となりえます。
判断能力が高い
ジョブホッパーには、自分には合わないと感じた職場をすぐに辞めるという決断ができます。
見切りや判断が非常に早い点もメリットといえるでしょう。よい意味で執着心がない点もジョブホッパーの特徴の一つです。
判断能力が高いがゆえに、それを仕事へと活かすことができれば、物事を素早く前進させることができるのではないでしょうか。成果を出すために必要な重要な能力の一つといえるでしょう。
強いこだわりをもっている
ジョブホッパーは、自信と強いこだわりをもっている傾向があります。
だからこそ自身の能力を活かせる、自身がもっとのめりこめるような仕事や職場を追い求め転職を繰り返しているのでしょう。自信やこだわりは成果を上げるために欠かせない要素です。
素質といってもよく、それらをもっているジョブホッパーは適切な企業へと転職することさえできれば、大きな成果を上げられる可能性を秘めています。
ジョブホッパーのデメリットやリスク
ジョブホッパーにはメリットが多くあるものの、転職回数や経歴によっては転職が徐々に難しくなってしまうことも否定はできません。どのような点に問題があるのかを考えてみましょう。
飽き性である
従事する企業や仕事を次々と変えてしまうのは、飽き性であることが原因の人も少なくないでしょう。
就職時や転職時はやる気があったものの、すぐに同じ仕事や職場に飽きてしまうためジョブホッパーとなってしまうのです。
さまざまなことや新しいことに興味をもつことはメリットといえますが、業種や職種を転々としているとキャリアアップのためのスキルを積み上げることができません。
自分に合った職場や仕事を探しているうちに、転職市場における自身の価値が落ちてしまうリスクがある点には注意が必要です。
企業にネガティブなイメージをもたれやすい
少しずつ転職することが当たり前の時代になってはいるものの、多くの企業では短期間に何度も転職を繰り返すジョブホッパーに対してネガティブなイメージをもっています。
上記のように飽き性であると捉えられてしまうことに加え、粘り強さや継続性に欠ける、責任感がないなどと思われてしまう傾向があるためでしょう。
企業は新しい人材を採用する際に、求人を出したり選考をしたりなど決して少なくはないコストをかけています。それにもかかわらず、短期間で辞められてしまえばコストを回収することができません。
ジョブホッパーを採用することは企業にとってリスクがあるのです。この点を考慮しながら転職活動を行っていく必要があります。
自身を過剰評価する傾向がある
自信があることはメリットであり成果を挙げるために重要な性質ではありますが、過剰評価であれば意味がありません。
ジョブホッパーはしばしば自身を過剰評価する傾向がみられます。自信と能力・経歴が釣り合わず、ギャップが生まれてしまうケースは少なくないでしょう。
そのため、よりよい条件の企業へ転職を希望するも採用されず、あるいは転職できたとしても希望の業務に従事できない、思ったような成果が出せないなどの結果を招いてしまうのです。
それがさらに転職を繰り返すことにもつながり、ジョブホッパーから抜け出せない悪循環へと陥ってしまいます。
ジョブホッパーを武器にするためのポイント
ジョブホッパーには悲惨な末路がまっていると表現されることがあります。
しかし、キャリアビルダーという言葉があるように、転職の回数が多いことそのものは決して悪いことではありません。企業によっても受け取り方は異なり、さまざまな経験をした人材に魅力を感じる企業もあるのです。
ジョブホッパーをポジティブに捉え、どのようなことを意識して転職活動を行えば成功やキャリアアップへとつながりやすくなるのかを考えてみましょう。
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- キャリアに一貫性や共通点を見出す
- 転職活動へと臨む際には、キャリアの棚卸しが不可欠です。
ジョブホッパーは自身のキャリアを振り返りながら、これまで従事した仕事や業務に一貫性や共通点がなかったかを意識的に見出すことが求められます。
何かしらの共通点が見出せれば、繰り返された転職はそのスキルを伸ばしたり経験を積んだりするためのものであり、意味があったと捉えることができるでしょう。
転職の際にはその一貫性や共通点を武器とすることで、企業にもアピールしやすくなります。
具体的な共通点が見つからなかったとしても、「キャリアの最終的な目標へと到達するためには必要な転職だった」と伝えることができれば、やはりこれまでの転職を武器として活かすことが可能です。
その場合は、“キャリアの最終的な目標”を具体的に示し、合理性があることを伝える必要があることも頭に入れておきましょう。
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- メリットを強調しアピールする
- ジョブホッパーのメリットとして紹介した点を強調しアピールすることも重要です。特に行動力や積極性、決断や判断の早さなどは大きな強みとなるでしょう。
そうした強みを「前職が嫌になったり飽きたりしたわけではなく、自分のキャリアにとってさらにプラスになる企業があれば即行動を起こすべきだと考えている」などのように、キャリアプランや自身の成長へのこだわりと絡めながらアピールすることが可能です。
ジョブホッパーが抱かれがちなネガティブなイメージの最小化へとつなげられるのではないでしょうか。
早い時代の変化へ適切に対応できるという点なども強調することで、企業に対して説得力のあるアピールを行うことができるでしょう。
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- 転職エージェントを有効活用する
- 自ら転職戦略を練ることが苦手な人や、ジョブホッパーとなっていることに負い目を感じている人は、転職エージェントへと相談してみるとよいでしょう。
転職エージェントには転職活動をサポートしてくれるキャリアアドバイザーが在籍しています。
これまでの経歴などを踏まえ、どのような業界や職種、企業であればさらなるキャリアアップが望めるのかなどを丁寧にアドバイスしてくれるでしょう。
これまでに説明してきたキャリアに一貫性を見出したりメリットを強調したりなども含め、転職成功のための具体的な方法や戦略について知ることが可能です。
応募書類や面接などでどのように表現すべきなのかもアドバイスしてくれるため、非常に心強く感じられるのではないでしょうか。
ジョブホッパーの状況を武器として活かすためには、転職事情に精通した転職エージェントやキャリアアドバイザーの存在は必須といってもよいでしょう。
ジョブホッパーが転職を繰り返す理由とは
自分がジョブホッパーに該当する場合、なぜ転職を繰り返しているのか、その理由をあらためて考えてみる必要があります。
収入アップやキャリアアップのために転職を重ねるのは問題ではありません。むしろ、雇用が不安定になり、一つの企業に勤め続けられる保障のない現代社会においては正しいあり方だといえます。
しかし、職場への不満が度重なる転職の理由となっているのであれば、一度踏みとどまるのが賢明でしょう。ネガティブな理由で職場を移る場合、同じことを繰り返す可能性が高いためです。
収入や地位を高めたいときは、よりよい職場への転職が非常に効果的な方法となります。自分にとってプラスとなる転職ができないか、転職の理由をよく考えることが大切です。
ジョブホッパーを卒業するためのポイント
ジョブホッパーを卒業することで、収入やキャリアを安定させられる可能性があります。
ジョブホッパー卒業のポイントとして、まずは安易に転職しないことが挙げられるでしょう。ネガティブな理由での転職の回数が増えるほど、転職市場では人材としての評価が低くなる恐れがあります。
今後は転職の回数をなるべく増やさないように、職場を移るべきかどうかは慎重に検討することをおすすめします。
次のポイントは、一つのスキルを極めることです。専門的な分野に特化したスキルが身に付いていれば、経歴に多少問題があっても好待遇で採用してもらえる可能性があります。
まずは身に付けたいスキルを探し、早い段階から取り組んでおくとよいでしょう。
最後に、転職の軸を定めることも重要なポイントです。転職することでどのような働き方を実現させたいのか考え、希望に沿った転職先を探してみてください。転職の軸を定めることで、説得力のある転職理由が用意できるはずです。
ジョブホッパーを卒業してキャリアの再生を目指そう!
ジョブホッパーがキャリアを再生させるためには、まず安易な転職をやめる必要があります。明確な目的意識を持って転職活動をし、将来に向けて自分を磨くことができる企業で働くとよいでしょう。
ジョブホッパーを卒業するために、転職エージェントを利用する方法もあります。マイナビジョブ20’sでは、20代を対象に転職活動のサポートを行っています。
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