転職をする際、できれば大きな企業へ働きたいと考える人は多いでしょう。しかし、大企業といっても実際にはどのような企業を指すのかわからない人もいるかもしれません。
そこで、この記事では、そもそも大企業とはどのようなものかを説明し、大企業で働くメリットやデメリット、さらに転職を目指すために心がけておきたいことなどを解説していきます。
大企業の定義とは何か?
結論からいえば、大企業とは何か、どのような企業を指すのかといった明確な定義は決められていません。
ただし、「会社法」を見ると「資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社」を大会社とするとされています。さらに、大会社とされる企業になると、会計監査人の監査を受ける義務や損益計算書の公告義務などが生じます。
しかし、中小企業と呼ばれる企業には監査を受ける義務や損益計算書の公告義務は設けられていません。
また、企業の規模を区別するための売上目安は特に決められておらず、大企業であるかそれとも中小企業かといった線引きは資本金と常時使用する従業員数で分けられています。
大企業の定義といえるものはないものの、中小企業については「中小企業基本法」によって細かく定義が決められています。
そのため、中小企業の定義にあてはまらない大きな規模の会社が大企業と考えればいいでしょう。また、正確には定義ではなく「中小企業者の範囲」と「小規模企業者」として規定されています。
「中小企業基本法」では、「製造業」「建設業」「運輸業」「卸売業」「小売業」「サービス業」「その他の業種」に分け、中小企業の規模が分類されています。
「製造業」と「建設業」、さらに「運輸業」と「その他の業種」はともに資本金(または出資の総額)が3億円以下または従業員数300人以下、「卸売業」は資本金(または出資の総額)が1億円以下または従業員数100人以下、「小売業」は資本金(または出資の総額)が5,000万円以下または従業員数50人以下、「サービス業」は資本金(または出資の総額)が5,000万円以下または従業員数100人以下です。
次に「小規模企業者」についても見ていきましょう。こちらも「製造業」「建設業」「運輸業」「卸売業」「小売業」「サービス業」「その他の業種」で規模が分けられています。
「製造業」と「建設業」、さらに「運輸業」と「その他の業種」はいずれも従業員が20人以下、そして「卸売業」と「小売業」、「サービス業」はともに従業員数が5人以下です。
また、「会社法」で会社として定義されるものは株式会社だけでなく、合名会社や合資会社、合同会社、そして特例として有限会社も含まれています。さらに、弁護士法人や監査法人、税理士法人といった士業法人も会社の範囲です。
続いて、従業員の定義についても説明していきます。中小企業庁によれば、「常時使用する従業員とは労働基準法第20条の規定に基づき、あらかじめ解雇の予告が必要な者」とあります。
労働基準法第20条の規定に添った雇用する者であれば、パートやアルバイト、正社員といった線引きは特にされていません。
ただし、会社役員や個人事業主は解雇予告を必要としないため、「中小企業基本法」で定める常時使用する従業員に当たらないと考えるのが一般的な解釈です。
日本国内における大企業の数
中小企業庁がWebサイト上で公開している
「日本の中小企業」の資料によれば、日本全体の企業数は421万社です。
そのうち中小企業と定義される企業の数は約419.8万社で全体の99.7%、いわゆる大企業に分類される企業の数は1.2万社で全体の0.3%ほどしかありません。
こうして見ると、大企業と呼ばれる企業の割合がいかに少ないかわかるでしょう。また、ここであげる中小企業とは、「製造業」「卸売業」「小売業」「サービス業」の4つです。
みなし大企業とはどのような企業か?
みなし大企業とは、規模としては中小企業に分類されますが、実際は大企業によって経営されているのが特徴です。「中小企業基本法」でいえば中小企業のことを指します。
例えば、大企業の傘下に入っていたりグループ会社であったりする中小企業が「みなし大企業」に当たります。つまり、企業の規模自体は小さいものの、重要な決定や基本的な方向性は大企業が決定権を持っているような企業のことです。
ただし、大企業の傘下になっている企業の場合、助成金の適用範囲などによっては中小企業に該当しないこともあります。
また、「みなし大企業」については、2019年に行われた税制改正によって定義が厳しくなっています。
「みなし大企業」である定義には「資本金または出資金が1億円を超える法人」と「資本または出資を有しない法人であり、従業員数が1000人を超える法人」とされていました。
改正後は、この2点に「100%大法人の子法人であること」と「100%グループ内の複数の大法人に対して発行済みの株式または出資のすべてを保有されている法人」という2点が追加されています。
大企業の類語にはどのようなものがあるのか?
大企業の類語には、上場企業や大手企業、大会社などがあげられます。上場していれば大企業というイメージを持つ人も多いでしょう。
必ずしも上場していることが大企業であるとは言い切れませんが、それでも規模が大きな企業の多くは上場している傾向が高いといえます。
他には、一流企業、マンモス企業、大手業者、国際企業などという類語もあります。いずれの場合も「レベルの高さ」や「大きさ」が感じられる言葉が多いのが特徴的です。
大企業で働くことのメリット・デメリット
次に、大企業で働くことのメリットとデメリットはどのようなものがあるのか、一般的なことをあげていきます。
まず一番のメリットとしてあげられるのは、規模が大きいために安定感があることです。福利厚生が充実していることも多く、給与以外でもさまざまな恩恵を受けやすいといえます。
例えば、資格取得サポート制度や保養所の利用、社宅利用に食事補助などを用意している企業は少なくありません。社宅として用意される物件も、個人で借りるより豪華な傾向が見られます。
また、企業によっては有名ホテルと提携し、保養所として利用可能にしているケースもあります。福利厚生が充実していると自費でまかなう部分が少なく、その分を預貯金に回せるのもメリットの一つです。
資格取得サポート制度をはじめ、教育体制が充実しているとその分自分のスキルアップができます。生涯を通して活用できる資格が取得できれば、転職にも有利に働くでしょう。
大企業の場合は社名自体有名なことが多く、それだけでも転職しやすいというメリットがあります。そして、大企業は全体的に見て給与が高いという特徴を持っています。
もちろん、配属先や勤続年数、役職などで異なりますが、他社と比べて高いのが大企業で働くメリットです。福利厚生が充実しているうえに給与も良いとなれば、その分、生活に余裕が出ます。順調な昇給も期待でき、仕事へのモチベーションにつながります。
さらに、給与が高い企業では退職金が手厚いのもメリットです。
実際には勤続年数によって変わってきますが、退職金が高いとそれだけ退社後の暮らしに余裕が生まれますし、起業するのも無理な話ではありません。起業した場合も、大企業のネームバリューがあれば信用にもつながるでしょう。
大企業になると、その分、事業所数が多くなります。日本国内はもちろんのこと、中には海外に支社を出している企業も珍しくはありません。
そうなると、異動が出やすいことがあげられます。できるだけ引っ越しをしたくない人にとっては、異動の可能性が高いのはデメリットといえるでしょう。
ただし、さまざまな場所で活躍してみたい人にとってはメリットになる場合もあります。また、遠方への転勤を経て出世コースに乗るという企業もあるため、異動がデメリットであるとは一概にはいえません。
大企業では、業績争いが起こりやすいこともデメリットです。そのため、仲間と協力しながら楽しく仕事をしたい人は向いていないかもしれません。
また、経営陣との距離が出やすいのもデメリットの一つです。企業によっては、経営者を含め上層部の人間と一度も会うことなく退社する人もいます。
経営陣との距離があると、個人の考え方や意見などを反映されるケースは少なくなります。そのため「大企業病」と呼ばれる現象が起こりやすいのもデメリットです。
「大企業病」とは、風通しが悪いことや、問題の改善までに時間がかかることなどを総称したもので、企業規模が大きいほど発生しやすくなります。
上層部との距離が遠いことは「大企業病」の原因であり、大企業にありがちなデメリットです。保守的な傾向が強いのも特徴の一つで、社風に合わないと働くこと自体が苦痛に感じる人もいるでしょう。
大企業への転職を目指すには?
大企業で働くことは、その後の人生にも大きな影響を及ぼしやすいといえます。大企業への転職を果たすには、まず自分の得意分野を活かせる企業を探すことから始めてみましょう。
どんなに自分が働きたいと考えても、企業の規模が大きければ大きいほど競争率は高くなります。人気の高い企業に転職するには、その企業が「欲しい」と感じる人材にならなければなりません。
まず、自分の得意分野に見合った企業を絞り、その企業について徹底して調査を行いましょう。どのような人材を求めているのか、自分が採用される確率がどれくらいなのかを分析することです。
企業の経営方針や経営理念はもちろん、これまでの実績や今後の方向性などについても細かく分析することが求められます。
しかし、個人でこれらのことを行い、転職を成功させるための対策を練るのには限界もあります。そのようなときは、マイナビジョブ20’sにまずは相談してみましょう。
マイナビジョブ20’sではキャリアアドバイザーによる適切なアドバイスを受けることができます。面接対策や面接のセッティング、大企業で働くために必要な心得などさまざまなことを教えてもらえます。
大企業に転職を果たすには努力と手段がポイント
大企業には明確は定義はありません。しかし、一般的に見て規模の大きな企業は存在感も安心感もあります。
転職を目指すなら、まず働くうえでどのようなメリットとデメリットがあるのか考え、自分に合った企業を選択することが大切です。
もちろん、スキルを身につけておくことも忘れてはいけません。必要な努力をし、転職に必要な手段を選ぶことが大きなポイントです。
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