経営陣の中核を担う専務ですが、実は会社法において定義されている役職ではありません。そのため、各企業は必ずしも専務を置く必要はなく、その業務内容も法的に指定されるものではありません。 したがって、大企業であっても専務を配置しないケースや、同じ「専務」の肩書でも実際の業務内容がずいぶん異なっているケースも出てくるのです。上述したような、専務の業務内容は一般的な傾向に過ぎないという点を頭に入れておきましょう。 逆に、会社法に規定される役職には、取締役・会計参与・監査役などがあります。ここでの専務は、会社法上では取締役に該当し、専務のほか、社長や副社長といった呼称は、いずれも会社ごとに任意で決められる役職名です。
専務が得られる収入は、給与とは異なる役員報酬です。従業員より高額の収入を得られるケースがほとんどで、一般的に年俸制によって確定した金額を12等分して毎月受け取ります。 しかし、毎月の報酬額が固定され、残業手当の対象とはならない、会社によってはボーナスが出ないといったデメリットも発生してしまいます。
専務は、従業員とは違い会社と雇用契約を結ばないので、基本的に労働基準法の適用対象から外れます。よって、失業した場合は失業保険が下りず、労働災害補償保険も対象とはなりません。 ただし、労働災害補償保険については、使用者(役員)であっても、実際の業務内容が「労働している」とみなされれば、適用対象となる例外措置があります。
福利厚生とは、使用者が従業員に対して、健康や生活の質の向上を目的に提供している制度です。専務は従業員ではなく使用者側の立場なので、社会保障に関わる法定福利厚生、住宅手当・通勤手当などの法定外福利厚生は、いずれも原則として適用対象にはなれません。 このように、役員特有の高額収入も期待できる専務ですが、従業員なら当たり前なはずの恩恵を得られないデメリットがあります。
専務は専務取締役を意味すると述べましたが、同様に「専務」が付いた混同しやすい役職があります。 その一つが、専務取締役と同じ「役員」の立場となる専務執行役です。専務執行役は、指名委員会等設置会社において、取締役会により選出される役職です。 指名委員会等設置会社は、経営の監督と執行を明確に分離した組織形態とされ、日本では100社弱が採用しています。専務執行役は、業務全般を管理する立場の専務取締役と比べ、より業務執行に特化しているポジションと解釈できます。
専務執行役員は、先述の専務執行役と1文字違いで酷似していますが、全く別の役職です。専務執行役員は役員(経営陣)の命令を受けて、業務執行業務の中心を担う責任者です。 専務取締役や専務執行役はともに「役員」ですが、専務執行役員は従業員に対する肩書となります。役職名に役員が含まれますが、法律上は「役員ではない」扱いとなるので注意しましょう。
会社により異なりますが、専務は社長の右腕として会社の舵取りを担う立場に立つことも珍しくありません。そこで、優れた判断力や分析力、経営センス、先見性、統率力などが特に必要とされるでしょう。 また、社長と専務の両者で、互いの欠点を補い合い、さらに長所を際立たせる関係性を築ければ理想的です。報酬については、人事院発表の 「民間企業における役員報酬調査」によると、平成30年の平均年間報酬は3,189万円となっています。
会社法上の取締役が常務の役職に就くケースがほとんどですが、専務同様に、常務の選任が法的に定められているわけではありません。常務の役職がない会社や、常務取締役が専務に近い業務をこなしているというケースもあります。 常務には、専務の紹介時に触れたほとんどの特徴が等しく当てはまります。まず、常務は会社法で定義されている役職ではありません。さらに、役員であることから、原則的に労働基準法や福利厚生制度の適用対象となりません。 常務執行役や常務執行役員など「常務」を含む紛らわしい役職もありますが、専務のケースと同様に役割や立場上の違いが存在しています。
常務は社長を補佐する立場である一方で、現場や従業員のマネジメントも求められる役職です。 上流と下流の課題を的確に引き出し、正確に情報伝達するためにも、コミュニケーション力やバランス感覚、統率力や決断力といった能力を有していることが求められます。専務以上に、さまざまな立場の社員の声を直接拾う機会もあり、現場からも頼りにされる役員として期待が高まります。 報酬については、人事院発表の 「民間企業における役員報酬調査」によると、平成30年の平均年間報酬は2,461万円です。
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