給与と給料って違うの?会社員が受け取るお金の違い

作成日:2020.12.03 更新日:2024.04.19

社会人になったら、お金の管理は自分で行うものです。しかし、会社からもらえるお金には、実はさまざまな種類があることを知っているでしょうか。たとえば、給与と給料は別物ですし、所得と収入も同じように見えて実は違うものです。こうした違いを知っておかなければ、お金の管理も上手にはできないでしょう。 そこで今回は、給与と給料の違いなど、会社員が受け取るお金の種類について解説します。

会社から支払われるすべての金銭が「給与」になる

雇用主と労働者は、決して不平等な関係ではありません。両者は互いに対等な関係であり、形式上は雇用主が上位であっても、労働法的には上下関係はないとされています。その証拠に、労働者は提供した労働の代わりに給与を受け取ります。すなわち、給与とは労働の対価報酬であり、仕事で果たした役割や業績に対して支払われる礼金のようなものなのです。 また、給与とは基本給だけではなく、会社から支払われるすべての金銭の総称です。たとえば、残業手当や特別賞与といった一時金のような金銭や、住宅手当や交通費といった諸手当なども給与の一部に含まれます。すなわち、会社から支払われた金銭はどのような名目であっても、すべて「給与」の一部として見なされるということです。 このように、給与の範囲は非常に広く、それは所得税法にも明記されている法律上の事実です。所得税法28条1項には、「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう」と記されています。また、金銭のみならず、商品などの現物もボーナスとして支給されれば給与の一部になる場合があります。

現金支給は給与?給料?給与と給料の違いとは

給料は、給与と似た意味を表す用語ですが、実は給料と給与は似て非なる言葉です。 給料が表す金銭の名目は、あくまで基本給のみとなります。すなわち、会社から受け取る給与のうち、賞与や手当といった名目を除いた金銭を「給料」というのです。単純に、給料は基本給の言い換え表現と覚えておけば間違いではないでしょう。

給料は変動しない

ボーナスや残業手当は、その時々で金額が動くものです。残業手当は残業した分だけ受け取れますし、ボーナスも会社の業績などによって変動します。一方、基本給である給料は、その時々の状況によって変動することはありません。給料は勤務時間に応じて定められる金銭であるため、正規の勤務時間が決められている会社では、毎月固定の金額が「給料」として支払われることになります。

給料が減額されることはない

基本給であり、固定給でもある給料は、会社側の一方的な都合では減額できないことになっています。これを「労働条件の不利益変更禁止の原則」といって、もし給料を減額する必要が生じたら、会社側はまず従業員の同意を得なければならないのです。ただ、会社によってはこの原則を守らず、総支給額はそのままに基本給を減額しているといったケースもあるので注意が必要です。

現物支給は給与の一部

労働基準法によれば、給与も給料も通貨で支払わなければならないと定められています。もちろん、基本給である給料は、例外なく現金や通貨で支払われるべきでしょう。一方、賞与や手当も含まれる給与は、従業員の同意があれば現金以外の方法で支給しても良いと例外的に認められています。つまり、現物支給も給与の一部になり得るということです。 たとえば、ボーナスとして支給された自社製品は、現物支給の代表例です。ほかにも、通勤定期券や住居・食事などの経済的利益も場合によっては現物支給に含まれます。現物支給で特に気を付けたいのは、それが所得税の課税対象に含まれる場合です。 たとえば、優秀な成績を上げた表彰として、一部の部署に記念品が贈呈された場合、その記念品の購入費分は所得税の課税対象になります。現物支給も給与の一部ですから、何が課税対象になるのか給与明細を参照してしっかり確認しておきたいところです。

手取りは給与から税金や保険料が差し引かれたもの

給与や給料は、会社から支払われる名目上の金銭または現物です。しかし、従業員が実際に受け取る金額は、明細に記入されている給与額より少なくなります。なぜなら、給与には税金や保険料がかかるからです。従業員の手元には、給与から税金や保険料が差し引かれた額が支払われます。この給与から必要な経費が差し引かれた金額のことを「手取り」といいます。 給与から差し引かれる品目は、所得税を始め、住民税や年金、また雇用保険料や介護保険料といった保険関係の料金です。会社によっては退職金の積み立て、労働組合費なども給与から差し引かれます。これらの品目を合わせると、手取りとして残るのは給与の80%程度です。たとえば給与が30万円の場合なら、手取りはその80%の24万円程度が目安になります。 ただし、給与の80%というのはあくまで目安です。所得税や保険料は累進課税で給与が上がるほど税率も上昇します。そのため、給与の高い人ほど、給与比で受け取れる手取り金額は少なくなる傾向にあります。自分の手取りが給与比で何%になっているのかは、給与明細から確認が可能です。給与明細は、主に「勤怠」「支給」「控除」の3つにわかれています。給与から税金や保険料がどの程度差し引かれているかは、控除の項目を見ればわかります。 控除とは、要するに給与から税金や保険料を差し引くということです。控除の項目には、給与から差し引いた名目、すなわち所得税や社会保険料の金額が記載されています。「支給」の項目に記されている給与額から、「控除」の項目に記入されている金額を差し引けば、手取りが給与の何%になっているのかが計算できます。ただし、給与から控除される金額は、必ずしも毎月同じ割合になるわけではありません。 たとえば、所得税は会社側が本人を代行して毎月納税しています。しかし、月々の納税額は、あくまでおおよその金額に過ぎません。そのため、月によっては多めに納税していたり、逆に少なめだったりすることもあります。もちろん、その過不足は年末調整で是正され、納税額が足りなければあらためて納付しますし、納め過ぎていれば還付されます。 もし、12月の手取り金額がいつもより高いと感じたなら、それは概算での所得納税が多すぎたので、年末調整で還付されたためです。このように、税金や保険料は月によって変わるので、手取りの割合計算は月収ではなく、年収ベースで計算するとより正確な数値を出せます。

経費が差し引かれる!給与収入と給与所得は何が違う?

給与には、さらに給与収入と給与所得という2種類の違いがあります。
■給与収入 端的にいえば年収のことです。年収とは、従業員が受け取る年間収入のことで、税金や保険料が差し引かれる前の総支給額を意味します。会社から支払われるすべての金銭を給与というのですから、いわば給与と給与収入は同じ意味を持つ言葉だといえます。 ■給与所得 給与収入から経費を差し引いた給与です。経費とは、仕事のために用いた費用のことです。たとえば、仕事でカフェを使ったら、そこでかかった飲食料は経費になります。また、出張で飛行機やタクシーを使えば、その際の交通費は経費として計上されるでしょう。こうした経費は、源泉徴収で給与収入から差し引かれて計算されます。そうして割り出される金額が給与所得です。
給与所得は、よく手取りと混同されがちですが、実は両者は異なる概念です。給与所得は総支給額から経費のみ差し引かれますが、手取りはそこからさらに税金や保険料が控除されます。すなわち、経費のみの控除である給与所得に対して、手取りは経費を含め、税金、そして保険料まで控除されるべきあらゆる項目が差し引かれた末に残る金額だということです。 総支給額から事業で使用した経費が差し引かれれば、サラリーマンにとっては大きな損失に見えるかもしれません。しかし、経費の計上はれっきとした節税対策のひとつです。事業においてやむなく使用した金銭を経費で落とせば、納めるべき税金が安くなるなどのメリットがあります。税金が安くなれば、最後に残る手取り金額は増えるので、給与所得の計算はサラリーマンにとっても利益のあることなのです。

給与所得控除はあらかじめ差し引かれる会社員の経費

会社に勤めているサラリーマンにとって、経費の計上は非常に難しいものです。たとえば、会社員がスーツやカバン、革靴、ノートパソコンを仕事で使う目的で購入すれば、それらの品物はすべて経費になります。しかし、経費として計上するためには、いちいち領収書を保管して、その都度申告しなければなりません。また、どこまでを経費として扱い、どこまでを実費で賄うかという線引きも難しく、その判断を一会社員に委ねるのは会社としても危険です。 そのため、会社に勤める従業員には給与所得控除といって、あらかじめ想定される経費を控除しておくという制度があります。つまり、いちいち経費を計上するのは手間がかかるので、最初から一律に給与収入から経費を差し引いておこうという制度です。このあらかじめ差し引かれる金額が、給与所得控除です。もちろん、給与所得控除は、不平等にならないように給与収入の金額に応じて計算されます。一般的に、給与収入が高くなればなるほど、給与所得控除で差し引かれる金額も大きくなります。

◆給与所得控除の計算方法

給与所得控除は所得税法で割合が決まっており、給与収入に応じた給与所得控除の計算式は以下の通りです。
162万5,000円以下 55万円
162万5,000円超180万円以下 収入金額 × 40% – 10万円
180万円超360万円以下 収入金額 × 30% + 8万円
360万円超660万円以下 収入金額 × 20% + 44万円
660万円超850万円以下 収入金額 × 10% + 110万円
850万円超 195万円
たとえば給与収入が162万5,000円以下の人の給与所得控除は55万円です。このうち、給与収入が600万円の人は、360万円超から660万円以下のカテゴリーに入り、その給与所得控除は「収入金額×20%+44万円」となります。
【給与収入が600万円の会社員の場合の計算方法】 (収入金額)600万円 × 20% + 44万円 = (給与所得控除)164万円 (収入金額)600万円 – (給与所得控除)164万円 = (給与所得)436万円

社会人の常識!自分でも計算できるようにしておこう

会社員が実際に受け取る金額は、給与明細に記入されている額面より少なくなります。ただ、手取りは月によって異なりますし、給与所得控除や税金・保険料なども給与収入に応じて変動します。給与に関して何か疑問を感じたら、給与明細を紐解いて自分で計算してみるのもひとつの手です。会社から不当に扱われないためにも、給与所得控除などは自分で計算できるようにしておきましょう。

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