最強コミュニケーション技「ソーシャルスタイル」

作成日:2022.03.03 更新日:2024.04.19

仕事をするうえで、さまざまなタイプの人と関わります。特に従業員数が多い企業であるほど、人間関係の悩みも増えやすい傾向があるようです。 考え方などがそれぞれ異なるため、気が合う人ばかりとは限りません。ただ、気が合わない、苦手な相手を避けるばかりでは業務に影響がでる可能性があります。 そこで、本記事では導入する企業が増えているコミュニケーション理論「ソーシャルスタイル」について解説します。 

ソーシャルスタイルでタイプ別の最適な接し方がわかる!

1968年、ソーシャルスタイルはアメリカ人心理学者デビッド・メリル氏によって提唱されました。 人の言動を4つのタイプに分類し、そのタイプ別に最適な接し方を見つけるためのコミュニケーション理論です。基本の分析方法は「感情と自己主張のどちらがより強いか」で判断します。 たとえば「感情が強く、自己主張は弱めのタイプ」「感情・自己主張ともに強いタイプ」というように分類することが可能です。 このようにして相手がどのようなタイプなのかを知り、その人物が心地よく感じる対応を選ぶことで円滑なコミュニケーションをとります。 ほかの部署や取引先とのやりとりでは、誤解が生じる場合も少なくありません。そういった誤解が生まれるような言動を避けたいときにも、相手にとって望ましい接し方ができればトラブル防止になります。

対処できるとわかればストレス減少に

苦手な相手と接する際、無意識に緊張し、普段通りに話せなくなるケースもあるかもしれません。これは過去に起きた出来事を思い出し、ノルアドレナリンが増えるからです。 ノルアドレナリンは、不安・恐怖を感じたときに脳内から放出される物質で、心理的ストレスの原因に接する度に増加します。 この理論の良いところは相手の行動パターンを分析し、次の言動を予測したうえで対応することが可能な点です。つまり、対策がはっきりとわかっているので不安になる要素がなく、心理的ストレスの蓄積量が減少します。

自分の感情のコントロールにも効果的

自己診断をすると自分を見つめ直せることから、感情のコントロールをうまくとれるようになります。たとえば、仕事でミスをしたときに落ち込んでしまう場合もあるでしょう。 しかし、落ち込んだままではネガティブループに陥る可能性もあります。自分がどのようなタイプなのかを分析できれば、ミスをしたときの立ち直り方やモチベーションアップの方法を見つけやすくなります。 ちなみに、自己分析する際のポイントは「自分から見た自分」ではなく「ほかの人から見た自分」をイメージすることです。

従業員同士で長所・短所を補える

従業員それぞれが相手のタイプを見極め、対策できるようになると、チームを組んでプロジェクトを成功させなければならないときなどにも効果的です。 お互いの長所や短所などをあらかじめ理解できていれば、その部分を補い合いながら進めやすくなります。 複数の部署からメンバーが集まってチームを組む場合には特にお互いについてよくわからず、積極的なコミュニケーションがとりにくい人もいるかもしれません。 そのように相手のことがまだ理解できていないときは先入観で見てしまいがちです。しかし、ソーシャルスタイルであれば、第三者的な視点から相手を分析できます。

ソーシャルスタイルで分類できる4つのタイプとは

ソーシャルスタイルは、縦軸に「感情」、横軸に「自己主張(意見)」を置き、それぞれがどの程度強いのかを当てはめます。 それによって「ドライビング」「エクスプレッシブ」「エミアブル」「アナリティカル」に分類することが可能です。ここでは、それぞれのタイプについて見てみましょう。
  • ドライビング
    ドライビングは自己主張が強めで、感情が弱いタイプです。性格的には合理的で口数が少なく、負けず嫌いな面もあります。 目的達成までのプロセスより結果重視で、必要情報の収集が完了次第、できるだけ早くその後のアクションを決める行動派です。 また、重要なのはあくまでも結果なので、そのためであれば手段を問わなかったり、当初の予定を簡単に変更できたりします。 冷静沈着な人が多く、臨機応変に行動できるリーダータイプである反面、自分の決定にこだわる性質から指示されることが苦手です。 また、思ったことははっきりと言ってしまうので相手とギクシャクしたり、遠巻きにされたりすることも珍しくありません。
  • エクスプレッシブ
    こちらは感情も自己主張も強いタイプで、楽観主義者。友人が多く、楽しいことや流行に敏感です。また、自身も周囲から注目されるのが好きで、新しいことにチャレンジをするときにも躊躇しません。 エクスプレッシブとは日本語で「表現力豊かな」という意味がありますが、このタイプの人物はまさに喜怒哀楽がはっきりとしています。 ノリが良く、初対面の際にも積極的に場を盛り上げようとしてくれるので緊張もほぐれやすいでしょう。ただ、論理的に考えたり、真面目に取り組んだりといったことは苦手です。
  • エミアブル
    感情が強く、自己主張は控えめなのがこちらのタイプです。エミアブルとは「愛想が良い」という意味で、その性質は共存共栄といっても良いかもしれません。 人間関係を重視し、自己主張は控えめ、相手の気持ちを慮る人です。日本人に多く、相手のヘルプを敏感に察知してサポートするのが得意なので、頼りがいがある人物と見られている傾向があります。 自分で最終決定をするのは苦手で周囲の意見に合わせるため、チームや部署などでみんなとは異なる意見を言う人が現れるとプチパニック状態になりがちです。 さらに、新しい変化に順応するのは得意ではないので、周囲の人間関係がガラリと変わるとストレスが溜まります。
  • アナリティカル
    アナリティカルは感情も自己主張も控えめなタイプです。感情のコントロールが得意で、物事を冷静に観察・分析します。 マイペースで論理的思考、自分ならではの考え方をするのもアナリティカルタイプの特徴です。リスクは徹底して避けるので非常に慎重で、仕事面でもミスをすることはめったにありません。 論理的思考であるがゆえに、それが必要と判断すれば、ほかの人の目からは冷酷に見えることであっても冷静に決定します。 会議では自分の意見を積極的に伝えることは少なく、決定が必要な場面でも確実に大丈夫だとわかるまで最終判断を下すことがありません。

仕事上で活かすためにはどうすれば良い?

ソーシャルスタイルは、コミュニケーション対策のひとつです。そのため、自分と相手を知ることで、苦手に感じるストレスを軽減したり、人間関係を円滑にしたりする目的で活用されています。 たとえば、入社して間もない時期は、まだ先輩や上司などの性格もよくわからず、どのように対応すれば良いのかわからない人も多いです。 良かれと思って言った言葉が相手の気分を害してしまう、褒めたつもりが嫌味にとられてしまったなど、自分のやりたかったこととは逆の展開になるケースもあるかもしれません。 そのようなことにならないように、性格分析をして適切な対応ができるようにするのが大切です。 まずは自己分析を行い、自分は4つのうちどのタイプに当てはまるのかを確認しましょう。 最初に自己分析をするのは、自分視点と第三者視点では自分の見え方が異なるからです。もしコミュニケーションがうまくいかない人がいるのであれば、その点が原因になっている可能性もあります。 自己分析が難しいときは、同僚や先輩、上司などに協力してもらうのもおすすめです。 次に相手の分析を行いますが、この際には日ごろからの言動や表現の仕方を思い出すとわかりやすいでしょう。 4つのタイプのなかで、いずれのタイプに最も近いのかがわかれば、あとは細かな特徴に当てはまるかどうかをチェックしていくと最終的なタイプにたどり着けます。 相手の分析ができたら、それぞれのタイプに合ったコミュニケーションをとるようにすれば良いだけです。こちらでは各タイプとどのように接するのが良いのかを例として挙げてみましょう。

ドライビング

ドライビングタイプは遠まわしな言い方よりズバリ結論から伝える話し方のほうが好まれます。そのため、何かを伝える際には結論を話してからそれに至る流れや理由などを伝えるのが最適です。 また、何事も自分で決定したいタイプが多いので、1つのアイディアのみではなく、複数の選択肢を提案するのが良いでしょう。 自身も負けず嫌いで努力家であるドライビングタイプは、特に自身と同じ努力を惜しまない人や負けず嫌いな人を好みます。

エクスプレッシブ

ノリが良い楽しい空間を好むエクスプレッシブタイプには、相手の話の聞き役に徹すると良いでしょう。 ノリの良さも重視するので共感を示しつつ、会話にはすかさず反応をするのがおすすめです。ただ、直感的に行動しがちなので、必要であれば相手の意見を修正する判断力も必要になります。 業務上においては、重要ポイントはその都度確認し、文書化しておくのも有効な方法です。

エミアブル

人付き合いを大切にするエミアブルタイプは、一般的に接しやすい人が多い傾向があります。そのため、コミュニケーションで悩むケースは少ないかもしれません。 ただ、優柔不断な部分や急に判断を迫られるのが苦手といった部分もあるので、そのような場面では一緒に考えるなど手を差し伸べるのが有効になります。 基本的に自分から悩みを口に出さないので、様子を見ていて悩んでいるようであれば声をかけてみるのも大切です。逆に、相談にのってもらったときには「ありがとう」と気持ちを伝えると喜ばれます。

アナリティカル

リスクを徹底的に避けるアナリティカルタイプには、決定まで時間の猶予が必要です。仕事で何かを決定する必要がある場合は早めに伝え、期限までなるべく日にちの猶予を与えるほうが良いでしょう。 プライベートで付き合う場合も同様です。慎重に物事を進めたいタイプなので、辛抱強く接するのが鍵になります。

コミュニケーション能力を高めて仕事の効率アップ

実際には未知数の可能性を秘めていても、対人関係がネックとなってそれが開花しないのはもったいないことです。 ソーシャルスタイルは4つのタイプに人を分析し、最適な接し方を見つけるサポートになります。コミュニケーション力がアップすればストレスも減少し、自身を見つめ直しながらスキルアップすることも可能です。 また、お互いに協力し合って業務を進めることができるので生産性の向上が期待できるでしょう。

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