会社で「架電の件で」「架電件数」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。しかし、状況からなんとなく意味は推測できるものの、正確にはよく分かっていない人もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では架電の正確な意味や類義語・対義語、具体的な使い方、架電業務が多い仕事などについて詳しく解説します。
架電とはどういう意味?
「架電」とは、「電話をかけること」を意味する言葉です。
「架」には「かける」「かけ渡す」の意味があり、この場合の「電」は「電話」を意味します。電話線を通すときは空中にかけ渡す必要があるため、漢字では「電話線を架ける」と表記します。
そこから、誰かに話すために電話をかけることも「電話を架ける」と記すようになりました。また、電報を打つことを「打電」というため、この表現に合わせて「電話を架ける」を「架電」と表記するようになったとされています。
ただし、「電話をかける」を漢字で表記する際は、「電話を掛ける」とするのが一般的です。
なお、「架電」という言い方は、もともとは法曹界などで使われていた専門用語でした。
それがほかの業界にも広まって、ビジネス用語として使われるようになった経緯があります。とはいえ、架電は広く使われているビジネス用語とはいえません。
コールセンターなどの電話をかけることが不可欠な業界では頻繁に使われますが、「架電」を使っていない業界や会社もたくさんあり、架電という言葉を聞いたことがない会社員もいます。
そのため、安易に顧客に対して使うと通じない場合もあるでしょう。架電という言葉を使っている業界や会社においてのみ、内部で使うようにしたほうが無難です。
荷電と架電の違いとは?架電の類義語や対義語も
架電と同じ読みの言葉に「荷電」があります。読みは同じですが、意味はまったく異なる用語です。うっかり誤って使うことのないよう、意味を正確に把握しておきましょう。
ここでは、荷電の意味のほか、架電の類義語や反対語も併せて紹介します。
荷電とは
荷電とは、物体が電気を帯びている状態やその電気(量)を意味する言葉です。主に物理や化学で使われる専門用語で、一般のビジネスとは何の関係もありません。
ところが、ビジネスシーンにおいて、しばしば「架電」と誤って「荷電」を用いるケースが見受けられます。間違うことのないよう、正確な意味を理解しておくことが大切です。
架電の「架」は「かける・かけ渡す」であり、荷電の「荷」は「荷物をかつぐ、になう」を意味します。それぞれの漢字の意味を理解していれば、間違うことはないでしょう。
意外に多い架電の類義語
架電は電話をかけることなので、それに類する言葉はたくさん存在します。
たとえば、「電話」「通話」「呼び出し」「発信」などです。「電話」は電話機を指す名詞ですが、「電話する」で電話をかける意味の動詞としても使われます。
「通話」は「電話機を使って話をする」という意味です。「呼び出し」は、本来はこの場にいない人物を呼んで来させる言葉ですが、「呼び出し電話」の略語として使われることがあります。
そのため、状況によっては架電の類義語であると広義に解釈できるでしょう。「発信」は情報を発することで、電話をかける意味でも使います。
このほか、「連絡をする」「一報を入れる」なども、広い意味で架電の類義語に含まれるでしょう。
押さえておきたい架電の対義語
架電の対義語は、「受電」「入電」「着電」などです。
「受電」はもともと電力の供給を受けることを意味する言葉ですが、ビジネスシーンでは、「オフィスに電話がかかってきて、それに応えること」を意味します。
「入電」は、本来は電信や電報が届くことを意味する言葉ですが、コールセンターなどの業務においては「顧客から電話がかかってくること」の意味で使われる用語です。
「着電」も電信や電報が届くことを意味する言葉で、ビジネスでは電話がかかってきたときにも使います。
架電の具体的な使い方を例文とともに紹介
ビジネスでは、実際にどのように「架電」を使用しているでしょうか。
ここでは、具体的な使用例をいくつか紹介しましょう。架電を使った具体例のなかでもっとも多いのは、「架電の件」という表現です。
ビジネスでは、一度電話をした相手に再度連絡を取り、前回の話に関する内容を伝える際は「先日、お電話にてお話させていただいた件ですが」などの前置きをします。
この長いフレーズをスマートに短縮させた言葉が「架電の件」です。架電の件は以下のように使われます。
・架電の件ですが、予定どおり納品できる見込みです。
・先週架電した件ですが、その後ご検討いただきましたでしょうか。
・架電の件です。ご査収のほど、よろしくお願いいたします。
・架電の件について、改めてご説明申し上げます。
また、以下のような使い方をすることもあります。
・○○様へは架電済みです。
・○○会社の○○様より〇時に架電がありました。
架電は電話をかけることなので、「架電がある」はもともとの意味からすると少しおかしな表現です。とはいえ、慣習的に相手から電話がかかってきたことを「架電がある」と表現する会社もあるので、覚えておきましょう。
このほか、テレアポ営業などでは顧客にひたすら電話をかける必要があります。このときの電話をかけた件数を表す用語として用いられるのが「架電件数」です。
また、電話をする際に使う専用の顧客リストは「架電リスト」といいます。以下のような使い方をします。
・架電件数をもっと増やさなければアポが取れない。
・1日あたり架電件数100件を目指す。
・架電リストを作成しました。
架電業務がある仕事にはどのようなものがある?
架電業務自体は、基本的にどのような会社のどの部署でも起こるものです。そのなかでも、特に架電業務が欠かせない仕事があります。
ここでは、架電業務が多い仕事を3つ取り上げて紹介します。
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- 電話を使った業務がメインのコールセンター
- 架電業務が多い仕事の代表的なものとして挙げられるのが、コールセンターです。コールセンターは大きく「インバウンド」と「アウトバウンド」に分けられます。
インバウンドは顧客からの商品に関する問い合わせや注文を受け付ける受信業務がメインで、アウトバウンドは営業やアンケートなどの電話をかける発信業務がメインです。
架電業務が多いのはアウトバウンドのほうで、テレアポ営業がよく知られています。テレアポ営業は、個人や法人に電話をかけ続けてアポイントを取る必要があり、仕事の大半が架電業務です。
アウトバウンドには、ほかに商品を購入した顧客にお礼の電話をかけたり、満足度調査をしたりする業務もあります。
インバウンドかアウトバウンドかでも違いがありますが、コールセンターに向いている人の特徴としては、「会話が好き」「気持ちの切り替えが早い」「前向きな姿勢で素直に頑張れる」などが挙げられます。
電話で話すことがメインとなるので、会話が好きな人であれば業務に取り組みやすいでしょう。単に好きなだけでなく、相手の話を丁寧に聞いて言いたいことを引き出したり、分かりやすく伝えようと工夫したりする姿勢も大切です。
コールセンターの仕事では、ときにはひどい態度の顧客にあたることもあります。そのようなときでも落ち込まず、さっと気分を変えて次の電話に取りかかれる人は向いています。
研修で教わったことや指導されたことを素直に聞き入れて頑張れる人であるというのも大切なポイントです。
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- 顧客に電話をかけることが欠かせない営業職
- 営業も、顧客に電話をかける機会が非常に多い仕事です。営業スタイルにもよりますが、基本的に商談の機会を得るためにリード(見込み客)に電話をかけることが欠かせません。
商談して契約にいたらなかったとしてもそれで終わりではなく、一定のスパンを置いて電話をかけて需要の掘り起こしすることもよくあります。契約してくれた顧客に対しても、まめなフォローの電話をかける必要があるのです。
営業に向いている人の特徴はさまざまです。たとえば、「人と接し話すことが好き」「勉強熱心で知識が豊富」「相手に寄り添った考え方ができる」「心身ともにタフ」といった特徴が挙げられます。
営業は、自社の商品やサービスを顧客に提案して購入・契約してもらう仕事のため、相手との対話が基本です。そのため、人と接するのが好きな人が向いています。
また、自社の商品やサービスに関する深い知識や理解も必要なため、勉強熱心なことも大切です。しかし営業では、自社の商品やサービスをただごり押しするだけではなかなか契約につながりません。
顧客に買おうと思ってもらうために、自社の商品やサービスがどのように役立つかを提案する必要があり、相手に寄り添って考えられる力が不可欠です。
契約を取るためにはひたすら営業活動を重ねる必要があり、それでも断られることも多く、心身のタフさも求められます。
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- 社内外の人とのやり取りが多い営業事務
- 営業事務は、営業関係の事務業務を行うのが主な仕事です。営業社員の仕事が円滑に回るように、さまざまな面でサポートを行います。
営業事務の仕事範囲は会社によって異なりますが、書類作成、在庫や受発注管理、電話対応、顧客情報管理など幅広い業務を担当するのが一般的です。
メインとなるのは契約書や見積書などの営業関連書類の作成や処理業務で、プレゼン資料を作成するケースもあります。商品の在庫を管理し、減ってくれば仕入れの手配も必要です。
営業社員は外回りなどで不在がちになるため、営業部にかかってくる電話のほとんどは営業事務が応対します。自分で判断できない内容であれば、いったん引き取って担当者に確認を取り、折り返しかけるケースも少なくありません。
顧客管理の一環として、顧客にフォローの電話をかけることもあるでしょう。一般事務職と比べても、架電業務が多くなります。
営業事務に向いている人の特徴は「サポートすることが好き」「コミュニケーション能力が高い」「臨機応変にさまざまな仕事をこなせる」などです。
営業社員の仕事が円滑に回るように煩雑な裏方業務を行うのが営業事務の本分のため、誰かをサポートすることが好きな人に向いています。自分が表に出たい人には合っていないでしょう。
営業担当者をはじめ、関連部署や顧客とも連絡を取り合う機会が多いため、コミュニケーション能力が高いというのも大切なポイントです。幅広い仕事を次々にさばいていく必要があるため、臨機応変にこなせる能力も求められます。