上司と会話をしているとき、真剣に聞いていることを示すために相槌を打つことは大切です。しかし、その際、「なるほど」という言葉を使ってはいけません。
なぜなら、「なるほど」は目上の人に対して使うと失礼にあたる言葉だからです。
そこで、本記事では「なるほど」の意味をはじめ、失礼にならない言い換え方や「なるほど」以外にも注意したい失礼な相槌を紹介します。
「なるほど」の意味とは?
「なるほど」とは、相手の意見に「同感である」「納得している」という気持ちを示すときに使う言葉です。
「なるほど」には「副詞」と「感嘆詞」の2つの使い方があります。
名詞以外を修飾するときは「副詞」としては使い、会話のなかで相槌を打つときは「感嘆詞」として使います。「感嘆詞」として使うときは「へぇ」や「ああ」といった種類の言葉と同じになります。決して目上の人に使う敬語ではありません。
「なるほど」の類語としては「うん」「ふむふむ」「へぇ」「本当に」「やはり」「さすがに」「やっぱり」「思った通り」「想像通り」「確かに」「納得」という言葉が挙げられます。
「なるほど」の意味をより深く理解するためには、語源を押さえておくとよいでしょう。
「なるほど」は漢字で書くと「成る程」です。それは語源が「成る程度」、その昔は「なるほど=できる限り」という意味だったからです。
それが次第に「できる限り以上のものはない」から「ほかには考えられない」という意味になり、現在の「明らかである」という意味になりました。そして、「あなたの意見は明らかに正しい」という意味で「同感」や「納得」を表す言葉として使われるようになったのです。
ちなみに、「なるほど」を英語で言うと「I see.」「Got it.」になります。ただし、カジュアルな表現であるため、ビジネスシーンで使うにはふさわしくありません。
「I see.」「Got it.」は英語圏の友達に対して使うことをおすすめします。英語のネイティブスピーカーは「That makes sense.」という言葉を使うことが多いです。「知りませんでした。そういうことなのですね」というニュアンスで、相手の意見に対する同感や納得の気持ちを伝えます。
ビジネスシーンでもプライベートでも使える言葉なので、海外の取引先相手に使うときに備えて覚えておくとよいでしょう。
「なるほど」は失礼な言い方か?
上司の話を聞くとき、相槌を打つ人は多いでしょう。黙っているよりも相槌を打ったほうが、上司の話に熱心に耳を傾けている姿勢を伝えることができます。
しかし、相槌のときに使う言葉によっては逆効果になることもあります。「なるほど」は上司に対する相槌の言葉としてふさわしくありません。
それは「なるほど」は「うん」と同じような印象を与える言葉で、敬語ではないからです。そのため、上司との会話で「なるほど」という言葉で相槌を打つと失礼に当たります。上司に注意され、恥をかくかもしれません。
「なるほど」を丁寧な言い方にすれば問題ないのではないかと思うかもしれません。しかし、「なるほどですね」と言い換えても敬語にはならないのです。また、「なるほどですね」は「なるほど、そうですね」の略で、文法的にも正しくはありません。
そもそも「なるほど」には「あなたの話は納得できる」という評価的なニュアンスが含まれています。相手を評価するというスタンスは上から目線です。そのため、上司に「傲慢な態度で人の話を聞く奴だな」と思われかねません。
さらに、「なるほど、そういう意見もありますね」「なるほど、しかし…」というような使い方をしてしまうと、上司の意見に納得しておらず、別の意見を持っているという含みを感じさせてしまいます。悪い印象を持たれてしまう可能性があるでしょう。
「なるほど」という言葉はプライベートで、友達同士で使う分には問題ありませんが、ビジネスシーンでは上司はもちろんのこと、取引先の相手や先輩に使うのは避けたほうがいいいでしょう。
失礼にならない「なるほど」の言い換え方とは?
ビジネスシーンで相手に失礼にならないように相槌を打つときには「なるほど」のかわりに、「はい」という言葉を使うことをおすすめします。電話ではなく、実際に顔を合わせて会話をしているのであれば「はい」と相槌を打った後に、深く頷くとさらに好印象になるでしょう。
ただし、「はい、はい」と「はい」を重ねて使うと、逆効果です。場合によっては相手の意見に対して「小馬鹿にしている」「あまり納得していない」「適当にあしらっている」というような印象を持たれてしまいます。「はい」は一度だけにしましょう。
また、いくら「はい」を一度しか言わないとしても、上司の話にその都度「はい」と相槌を打っていると、真実味がないと思われてしまうかもしれません。相槌は適度に、ここぞというときに打つほうがよいでしょう。
より丁寧に相槌を打ちたいのであれば「はい、私もそのように思います」「はい、おっしゃる通りです」「はい、承知しました」「はい、かしこまりました」という言葉を付け加えます。ただし、それぞれに微妙にニュアンスが異なります。
例えば、上司の話に同意を示したいときは「はい、おっしゃる通りです」がよいでしょう。「はい、勉強になります」もおすすめです。
その際、間違えやすいのが「おっしゃる通りです」を「おっしゃられるとおりです」と言ってしまうことです。「おっしゃる」も「られる」も敬語のため、重ねて使うと二重敬語になってしまいます。
納得の意味で使いたい場合は「はい、承知しました」「はい、かしこまりました」と言うとよいでしょう。率直に相手の意見に従う気持ちを表すことができます。
「承知しました」「かしこまりました」と同じ意味に「了解しました」という言葉があります。しかし、ビジネスシーンでは「はい、了解しました」というのは避けるようにしましょう。というのも、「了解しました」はカジュアルな言葉なため、上司や取引先相手に使うのにはふさわしくないからです。
少し硬い表現になりますが、「はい、左様でございますか」という言葉を使うこともあります。ニュアンスとしては相手の意見に対して「理解しました」ということを表す言葉です。
例えば、取引先とのかしこまった場で使うときに適しています。職場の先輩など関係性が近ければ、「はい、そうですか」「はい、そういうことでしたか」という言葉を添えて、「理解しました」という意味を伝えてもかまいません。
「なるほど」以外にも注意したい失礼な相槌とは?
「なるほど」以外にも、ビジネスシーンで使うのにふさわしくない相槌はあります。
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- 「参考になります」
- 「参考」という言葉には「自分の意見の足しにする、手掛かりにする」という意味があるため、上から目線になってしまいます。そのため、相手から「偉そうな奴だ」と思われてしまうかもしれません。
「参考になります」ではなく「勉強になります」という言葉を使うと、相手の意見を立てている印象を与えることができるでしょう。
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- 「たしかに」
- まず、「たしかに」は敬語ではありません。そのため、ビジネスシーンで使うのにはふさわしくない言葉です。
思わず「たしかに」という相槌が出てしまったら、その後に「たしかに、おっしゃる通りですね」「たしかに、おっしゃる通りと存じます」と続けると、ビジネスシーンで使うのに適切な言い方になります。
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- 「うん、うん」
- 意識せずに思わず出てしまう言葉かもしれません。しかし、ビジネスシーンでこのような相槌の仕方をすると、相手から礼儀知らずと思われてしまいます。「うん、うん」と相槌を打つぐらいなら、何も言わずにただ頷くだけのほうがいいでしょう。
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- 「本当ですか?」
- 相手の意見に対して感動や驚きを表すときにも使いますが、懐疑的であることを示す場合に使うこともあります。
そのため、「自分の話を疑っているのか?」と相手に思われてしまう可能性があります。悪い印象を与えることなく、ストレートに驚きや感動を伝えたいのであれば、「本当にびっくりしました」「初めて伺う話で驚きました」というような言い方をするようにしましょう。
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- 「一理ありますね」
- この言い方には「あなたの意見は納得できる面がある」という評価的なニュアンスが込められています。
たとえ相手の意見に同感を示していたとしても、「評価する」というスタンスは上から目線です。目上の人に対して使う言葉としては適切ではありません。
同じような言い回しで、ビジネスシーンにふさわしい相槌としては「はい、それは道理ですね」という言葉が挙げられます。
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- 「それはひとつの方法だと思いますが…」
- 同意をしているものの、相手に合わせているという印象を持たれてしまいます。
同じような言い回しとしては、「そのような方法があるとは考えつきませんでしたが…」という相槌をおすすめします。
正しい相槌で自分の評価をアップさせよう!
ビジネスシーンでもプライベートでも、相手の話に相槌を打つことは大切なことです。
真剣に相手の話を聞いているという姿勢を表すことができるからです。しかし、相槌を打ちさえすれば、なんでもよいというわけではありません。
プライベートで友達や家族に対して「なるほど」と相槌を打つことはまったく問題ありませんが、上司や先輩、取引先の相手など目上の人に対して「なるほど」という相槌を使うのは不適切です。
上司や先輩であれば注意してくれますが、取引先の相手の場合、何も言わず、ビジネスマンとして失格の烙印を押されてしまうかもしれません。
ビジネスシーンでは言葉遣いひとつで信頼関係が築けたり崩れたりします。
自分自身の評価を上げてビジネスをスムーズに進めるためにも、目上の人に対しては「なるほど」という言葉を使わないのはもちろんのこと、日頃から意識して相槌を打つようにしましょう。