求人票を見れば理論年収がわかる?理論年収の定義や計算方法を徹底解説

作成日:2021.07.09 更新日:2024.04.19

転職を考えるときに大切なのが給与面です。求人票には必ず給与に関する項目があるので、そこである程度の給与面でのイメージがつくでしょう。 しかし、多くの求人票に載っているのは月給で、年収に関してはあまり載っていません。 そんなときでも、理論年収を計算することができれば、その会社に転職した際の年収を知ることができます。今回は理論年収の定義や計算方法、転職における注意点などについて解説していきます。

そもそも理論年収ってなに?理論年収の定義と内訳

転職を考えている人にぜひとも知っておいてもらいたい「理論年収」ですが、理論年収という言葉はあまり耳慣れない人もいるのではないでしょうか。 転職などについてたくさん調べているという人でもなければ、日常生活ではあまり使わない言葉です。しかし、理論年収を知ることで企業の給与待遇を正確に把握することができます。 逆に、理論年収の計算ができなければ、いざ転職をしてみても「思っていたのと違った」という事態を引き起こしかねません。まずは、理論年収という言葉の定義と、その内訳について解説していきます。
 

理論年収の一般的な定義

「月次給与の12カ月分、理論上の通年賞与および新規採用者と同等の被雇用者に対し支払われる諸手当(通勤手当を除く)の合計額」とされています。
少しややこしくてわかりにくいかもしれません。これは簡単に言ってしまえば、その会社で1年間勤務した場合の給与と賞与を合わせた金額です。 給与と一括りにしていますが、毎月もらえる金額の合計だと考えてください。 具体的には、ここで言う給与とは、基本給と残業代に加えて、役職手当や地域手当などの諸手当を合わせたものを指します。なお、交通費は人によってばらつきがあり、一般化しにくいため、通勤手当は理論年収には含まれません。 賞与は、いわゆるボーナスと言われるもののことで、理論年収に含んで考えます。多くの会社では夏のボーナスと冬のボーナスの2回に分けて、会社の業績や社員の査定によって決められることがほとんどです。 賞与の支払いについての算出方法は、実は会社によって異なります。ですから、すべての会社に言えるわけではありませんが、基本給×賞与支給月数で計算することが一般的です。 賞与支給月数とは、ボーナスの際に給与何カ月分を支払うか、ということを言います。夏と冬にそれぞれ2.5カ月分だとすると、1年間の合計は5カ月分ということになります。 ここで注意が必要なのが、賞与額は「月給×賞与支給月数」ではなく、「基本給×賞与支給月数」で計算されるという点です。
例えば基本給12万円+諸手当8万円の月給20万円で、支給月数5カ月分だとすると賞与は60万円です。しかし、基本給18万円+諸手当2万円だとすると、同じ月給20万円でも賞与は90万円です。
同じ月給20万円でも基本給が高いか、諸手当が高いのかによって賞与は全く違う金額になるのです。 一見同じ給料に見えても賞与の額が30万円も変わるので、年収にはそれだけの差ができてしまいます。また、基本給が関わってくるのは賞与だけではありません。 退職金についても退職時の基本給と勤続年数などから計算する会社が多いため、月給だけでなくその内訳もよく見る必要があります。

求人票から理論年収を求めるには?理論年収の計算方法

さて、その会社で1年間勤務した場合の給与と賞与を合わせた金額である理論年収ですが、内訳がわかってしまえば、計算するのは簡単です。 次の式に求人票に書かれた情報を当てはめることで、理論年収を求めることができます。 その式とは「(基本給+諸手当)×12カ月分+(基本給×賞与支給月数)」です。(基本給+諸手当)は月給のことなので、これに12カ月をかけることで1年間の月給の合計を求めることができます。 また、(基本給×賞与支給月数)はボーナスを出すためのものです。ここで出てくる賞与支給月数とは、年間のボーナスが給料何カ月分か、ということを表したもので、仮に、夏と冬にそれぞれ2.5カ月分支給であれば、年間の賞与支給月数は5カ月ということになります。この式にいくつかの例を当てはめてみましょう。

月給20万円の例

A社…基本給12万円、諸手当8万円、賞与支給月数5カ月

理論年収は(12万円+8万円)×12カ月+(12万円×5カ月)=300万円

B社…基本給18万円、諸手当2万円、賞与支給月数5カ月

理論年収は(18万円+2万円)×12カ月+(18万円×5カ月)=330万円
A社とB社は月給も同じ20万円ですし、ボーナスに関しても夏と冬にそれぞれ2.5カ月分ずつの賞与支給月数5カ月と同じ条件に見えます。 しかし、理論年収を計算してみると、基本給が低く設定されているA社が300万円なのに対して基本給を高めに設定しているB社は330万円と、年収では30万円もの差がついてしまっています。このようなケースがあるため、求人票をぱっと見るだけでなく、しっかり理論年収まで計算する必要があります。 また、理論年収には含まれていませんが、交通費がいくら支給されるのか、というのも確認しておく方が良いでしょう。 仮に月の定期代が2万円だとして、全額支給されるのか、半額のみ支給なのか、もしくは交通費は自腹なのかという違いによっても実質の年収が変わってしまいます。仮に先ほどのA社で、月に2万円の交通費が支給されない場合、年間で24万円の交通費を支払う必要があります。 理論年収は300万円でしたが、実質の年収は276万円ということになります。仮にB社が全額支給だとしたら、一見全く同じ条件に見えても実質の年収はA社が276万円に対してB社が330万円と、実に54万円もの差があります。別のパターンも考えてみましょう。

C社…基本給20万円、諸手当5万円、賞与支給月数1カ月

理論年収は(20万円+5万円)×12カ月+(20万円×1カ月)=320万円
月給はC社の方が5万円も高いのに、理論年収を計算してみると、月収20万円のB社の方が年収が高いことがわかります。同じ月給、同じ賞与支給月数のA社とB社でも、基本給が違うというだけで理論年収は30万円もの差が生まれました。 また、月給20万円のB社と月給25万円のC社とでは、一見C社の方が給与面での待遇は良いように見えます。しかし、賞与支給月数の違いから、理論年収を計算してみるとB社の方が10万円高いという結果でした。 求人票に書かれた情報をただ見るだけでなく、理論年収を計算することは本当に大切です。

こんなはずじゃなかった?転職における理論年収の注意点

求人票で月給を見るだけでなく、きちんと理論年収を計算することの大切さがわかったでしょう。 しかし、理論年収を事前に計算していても「いざ転職してみると実際の年収が違った」ということもよく耳にします。理論年収と実際の年収が違うというのはなぜ起こってしまうのでしょうか。 転職における理論年収の注意点もいくつかありますので、説明していきます。 まず知っておきたいのが、「理論年収」「実年収」「手取り年収」という3つの言葉です。

■理論年収…

これまでに説明してきたように、1年間勤務した場合の給与と賞与の合計を計算して算出したものです。

■実年収…

自分が実際に支払いを受けた給与と賞与の総支給額で、この実年収を一般的に年収と呼びます。この実年収には、会社からその人へと支払われたすべての金額ですので、実際にはここから税金や社会保険料などが引かれています。

■手取り年収…

本来は会社から社員に支払われ、社員がその給料の中から支払わなければいけないお金を、会社が直接払ってくれているというイメージです。 これらが差し引かれて、実際に振り込まれる金額を手取り年収と言います。社会保険や税金というのは、結局支払わなければいけないので仕方ないのですが、かなりの金額を引かれるものです。 ですから、これらが差し引かれた手取り年収は、理論年収よりも相当低くなってしまいます。 「事前に理論年収を計算していたのに、思ったよりももらえなかった」というのは理論年収と手取り年収の差によって起こってしまいます。

実年収が理論年収と違ったケース

実年収は、社会保険料や税金を差し引く前のものです。会社が実際に社員に支払った給与と賞与の合計なので、本来なら理論年収と同じ金額になるはずです。 しかし、求人票に記載されている内容、特に賞与の部分に関しては、自社社員の年齢層や職種別の平均が書かれていることが多いのです。 賞与欄に夏と冬にそれぞれ2.5カ月分支給と書かれていても、それは「この会社で何年も働いている人に対してはそれだけの賞与が払われていますよ」という意味で書かれていることもあります。 そもそも賞与、ボーナスの支給は法律で義務付けられているものではありません。会社によって算出方法も異なりますし、業績が悪化した際には支給されないというケースもあります。それは会社として法律的には問題のないことなのです。 賞与や基本給のベースアップなどは、多くの会社では査定によって判断されます。仮に4月から働き始めたとして、6月になったから自動的にボーナスが満額出る、という会社ばかりではありません。 もともと会社にいた社員と同じだけのボーナスが支払われるのは次の年から、という会社も少なくないのです。また、賞与に関しては業績などにも左右されますから、昨年度が5カ月分支給だったからといって、今年も同じだけ出るとは限りません。 これは転職したての社員に限らず、全員に言えることです。ですから「求人票に書いてあった賞与欄の通りのボーナスを期待していたら、思っていたより少なかった」ということはよくあります。 さすがに基本給や諸手当が求人票とあまりにも異なることは少ないので、理論年収と実年収が異なるのは賞与、ボーナス面での違いということがほとんどです。初年度からボーナスへの過度な期待はしない方が良いでしょう。

理論年収を計算して、正確な給与待遇を把握しよう

あまり深く給与面を考えずに転職をするのと、しっかり把握したうえで転職するのとでは生涯で稼げる金額が変わってきます。 求人票に書かれている月給や賞与をパッと見ているだけでは正確な給与待遇を把握できたとは言えません。 理論年収を計算することによって、正確な給与待遇を把握し、「いざ転職してから思っていた待遇と違った」ということのないようにしましょう。

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