就職や転職の際に必須となる面接は、企業や採用担当者に自分を知ってもらう重要な機会です。面接マナーや面接対策で多くの人の頭を悩ませるものに「ノック」があります。
面接時のノックについて、正しい回数や方法を知っている人は意外と少ないようです。本記事では社会人なら身につけておきたいノックについて解説します。
正しい回数や方法、さらには入室から着席までの流れを知り、面接に活かしましょう。
面接時のノックの正しい回数
まずは、面接時の正しいノックの回数を把握しておきましょう。そのうえで、日本企業へ応募する際の面接で適切とされるノックの回数と避けたい回数もあわせて解説します。
プロトコール・マナーでは4回とされている
世界には国家元首同士の会談などで通用する儀礼である国際儀礼とされるものがあり、これを「プロトコール」と呼びます。この国際儀礼を元に作られたものが「プロトコール・マナー」です。
世界標準公式マナーとも訳されるこのマナーによると、初めて訪問した場所や人、あるいは礼節をもって接するべき相手に対してノックをする場合、その数は「4回」と定められています。
就職や転職の際の面接は、まさにこれに当てはまると考えられるでしょう。つまり、面接時のノックの正しい回数は4回となります。
日本では3回が一般的なビジネスマナー
日本人の感覚からすると、面接であっても4回のノックは多いと感じる人は少なくないでしょう。日本に限ったビジネスマナーで考えると、面接時のノックは3回が適切であるといえます。
これは慣習によるところが多く世界標準からは外れますが、実際には3回のノックで違和感を感じる採用担当者や面接官はいないと考えて問題ありません。むしろ4回のノックは少し多いと感じる面接官もいるでしょう。
ちなみにプロトコール・マナーでは、3回のノックは家族や友人、恋人など日常的に接する親しい人の部屋などに入る際の回数とされています。
1〜2回は日本でもNG
1回のノックで済まそうとする人は多くはないはずですが、中には2回のノックが適切であると感じる人はいるのではないでしょうか。面接時には1〜2回のノックはNGとされている点には注意しておきましょう。
日本においても2回のノックはビジネスマナー違反であるという認識が徐々に広まってきています。やはり3回以上のノックを目安に、それが自然とできるよう練習しておくべきです。
ちなみにプロトコール・マナーでは、2回のノックはトイレに誰か入っていないか確認する際の回数とされています。このあたりの認識も浸透してきているので、就職や転職を目指す人も同様に考え方を改めておきましょう。
ビジネスシーンでノックが重要視される理由
面接時のノックの回数は、それほど大事なものなのでしょうか。たった1回の違いが、なぜそれほどまでに重要であるのかを考えていきましょう。
ノックの回数で印象が変わる
ビジネスシーンではしばしば、ノックの回数で応募者の印象は変わらないとする意見も聞かれます。確かに、ノックのみで応募者のすべてを判断し採否を決定する採用担当者や面接官は多くはないでしょう。
とはいえ、2回と3回の間には大きな差があり、この差が面接官に与える印象を大きく変えてしまう可能性は否定できません。ビジネスにおいて能力や実績が重要であることはいうまでもないでしょう。
しかし、はじめて就職や転職を目指す若い人には、その能力を測るための材料が不足しています。企業側も履歴書や職務経歴書だけでは十分に判断できません。そこで参考にせざるを得ないのが、ビジネスマナーや一般教養などです。
ノックの回数が3〜4回の人と、1〜2回しかしない人とを比較した際、前者の方がよりビジネスマナーを知っていると認識されるのは当然でしょう。
応募者の能力や学歴、実績が拮抗していた場合は、特にマナーや所作といったところに判断材料が生まれてもおかしくはありません。
特に採用担当者や面接官はビジネスマナーを熟知している可能性が高いため、ノックの回数が1回異なるだけで印象が変わることは決して珍しくはないのです。就職希望者や転職希望者は、そう認識しながら面接に臨むのが良いでしょう。
ノックの仕方でも変わる印象
ここまでノックの回数についてみてきました。面接時には回数以外にもノックの注意点があります。
回数に問題はなくても、ノックの仕方に問題があればマナー違反と捉えられてしまうので注意が必要です。速いスピードでのノックは控えましょう。
落ち着きのなさを感じさせてしまい、よい印象をもたれない可能性があります。強すぎるノックも厳禁です。
プロトコール・マナーに従い4回のノックをする場合は、「コンコン、コンコン」と2回ずつ間を少し開けてノックするとよいでしょう。しつこさも感じさせず、スマートな印象を与えることができるのではないでしょうか。
ノックから入室して着席するまでの流れ
ノックの回数や仕方を問題なくクリアしたあとの行動や所作も重要です。ここからは、ノックから入室・着席までの流れをみていきましょう。
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STEP1返事を待ちドアを開ける
ドアをノックをしたら、部屋の中からの返事を待ちます。
「どうぞ」などの声が聞こえたらドアを開けましょう。ドアを開ける際も比較的ゆったりとしたスピードを意識します。
ゆっくりすぎる必要はありませんが、余裕があると思ってもらえるようなドアの開け方を意識してください。
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STEP2入室する
ドアを開けたら、その場で「失礼いたします」と声を発します。
ドアを開けている最中に声を発さないように注意しましょう。部屋の中に入り、振り返ってドアを自らの手で閉めます。自然にドアが閉まるのを待つことがないようにしてください。
ドアを閉め終わったら改めて面接官の方を向き「よろしくお願いいたします」と伝え、頭を下げましょう。
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STEP3椅子の横まで歩き挨拶をする
挨拶のあと、歩いて椅子の横まで進みます。椅子の横に立ち、そこで名前を言い、改めて「本日はよろしくお願いいたします」と伝えます。
喋りながら頭を下げてはいけません。お辞儀のタイミングは名前と挨拶を言い終わった後です。
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STEP4着席する
面接官に「どうぞ」や「おかけください」などと言われてから着席しましょう。
着席前には「失礼いたします」と発します。椅子に座る際にはできる限り音を立てないよう注意してください。
椅子には深く腰掛けますが、背もたれに背中をつけてはいけません。荷物は特に指示がなければ椅子の横に置いておきましょう。
想定外の状況での対処法
面接では、決して予定通りに物事が進むとは限りません。想定外の状況になったり思いも寄らない事態が発生したりすることもあるでしょう。
そのようなケースでの対処法を紹介します。
面接室のドアが開いているケース
面接時のノックの回数や仕方を解説しましたが、そもそも面接室のドアが最初から開いている場合はどうすればよいのでしょうか。
その場合、ノックをする必要はありません。部屋の外で「失礼いたします」と発し入室してください。ドアのない部屋で面接が行われるケースも同様です。
部屋の入り口に立ち、「失礼いたします」と声を発してから入室しましょう。
ドアが開いている、あるいはドアがないからといって慌ててはいけません。あらかじめそのようなケースがあると想定しておくことで、焦らず適切に対処できるでしょう。
ノックを忘れてしまったとき
緊張のせいでノックをせずにドアを開けてしまう事態も想定しておきましょう。
もしノックを忘れてしまっても慌ててはいけません。ノックのし忘れに気づいた時点で、「ノックをし忘れてしまいました、申し訳ございません」と素直に伝えましょう。
入室後にノックをし忘れたことに気づいたとしても、わざわざ外に出てやり直す必要はありません。応募者が緊張していることは面接官も承知しているはずです。
ノックを忘れてしまったことが採否に大きな影響を与えることはないでしょう。その場で謝罪をしたあとはすぐに切り替えることが重要です。
ノックをしたけど返事がない場合
ノックを3回したけれども、ドアの向こうから反応がないケースではどのように対処すればよいのでしょうか。
数秒待っても返事がない場合は、再度ノックをします。その際も3回ノックしましょう。
ノックが小さくて聞こえなかった可能性も考慮し、最初のノックよりも若干強めにドアを叩きます。それでも返事がない場合は、「失礼いたします」と声をかけドアを開けましょう。
中に人がいなければ受付などで確認をしてください。中に人がいた場合は、名前を伝えたうえで「本日はよろしくお願いいたします」などと発しましょう。
もし面接室に間違いがなければ中に入るように、あるいは椅子に座るように促されるはずです。その指示に従ってください。
面接官よりも先に入室するケース
受付や控え室で、面接官があとから来るので先に面接室に入っているように指示されるケースも想定しておきましょう。
こうしたケースでは指示通りに先に面接室へと入りますが、その際もドアが閉まっているのであればノックをしてから入室します。
ドアを開けたあと、部屋に誰もいなかったとしても「失礼いたします」と発してから入室しましょう。
指示がない限りは、椅子には座らずに面接官を待ちます。スマートフォンに触れたり視線をあちらこちらへと動かしたりせずに、落ち着いて待つことを心がけてください。
面接に不安がある人がすべきこと
就活生はもちろん転職希望者にとっても、面接は緊張や不安を感じるものでしょう。もし少しでも不安を和らげたいのであれば、以下の2つの方法を試してみてください。
練習やシミュレーションを繰り返す
不安や緊張は、不慣れが原因で感じることが少なくありません。また、失敗してはいけないとプレッシャーを感じすぎることも過度な不安や緊張へとつながります。
面接は何度も実戦を積むことが難しいものですが、練習やシミュレーションを繰り返すことで、多少は不安を和らげることができるのではないでしょうか。
頭の中だけでイメージするのではなく、実際に動き発声しながらの練習が効果的です。ドアをノックする強さや速さは、自宅のドアなどを使い練習しておきましょう。
上記で触れたさまざまなシチュエーションも想定内の出来事となるようシミュレーションを繰り返してください。まったく練習していない状態と比べると、落ち着いて面接に臨めるようになるのではないでしょうか。
就活や転職専門のエージェントに相談する
面接対策は孤独な戦いとなりがちです。
一人での練習で不安や緊張が和らがない、もしくは面接対策が物足りないと感じる人は、就活や転職に特化したエージェントに相談しましょう。就職活動や転職活動のサポートをしてくれるのがエージェントサービスです。
主なサービスは求人紹介ですが、それ以外にも応募書類の作成や面接に関するアドバイスも受けられます。特に就職や転職がはじめての人にとっては、非常に意味のあるサービスとなるでしょう。
多くのエージェントサービスは無料で登録・利用できます。一度登録し相談してみてはどうでしょうか。面接対策も含め、適切なアドバイスをもらえるはずです。